第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演34群 マネジメント戦略

2023年11月9日(木) 09:00 〜 10:00 第8会場 (G314+G315)

座長:各務 初恵

[口演Y-34-1] 看護職の配偶者控除額を引き上げ人材確保するために

―扶養範囲内で働くパート看護職の労働力を最大限活用するための政策提言―

宮田 久美子1, 藤井 あゆみ2, 舘林 美加子3, 高谷 一枝4, 石原 美和5, 佐藤 直子6 (1.横須賀共済病院, 2.京浜総合病院, 3.三浦市立病院, 4.けいゆう病院, 5.神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科, 6.西武文理大学看護学部)

キーワード:配偶者控除、配偶者特別控除、看護師確保、年金、政策提言

【目的】看護職確保はどこの施設も困難を極め、厚生労働省推計では2025 年に全国で27 万人の看護職不足が予測されている。看護職の約9 割が女性であり、パート看護職の配偶者控除額を200 万円に引き上げる事で、一人の労働時間が増え人材不足解消に繋がると考えた。【方法】認定看護管理者教育課程の政策提言演習で文献検討、分析、政策を検討した。先行文献使用の際は、著作権の配慮を行った。【結果】2021年の看護協会実態調査では、35 歳から44 歳までのパートが全体の10 ~ 15%を占めている。パートで働く理由は、ワークライフバランス重視、及び税金・社会保険料負担軽減である。現在103 万円までの収入であれば所得税や社会保険料の自己負担はなく、配偶者控除の対象となる。平成22 年厚生労働省パートタイマー白書(以下白書とする)では、主婦パートの76.8%は年収103 万円以内であり、41%が配偶者控除の対象である。社会保険や配偶者特別控除の適応範囲も含めると80.2%のパートが就業制限をしている。1961 年に内助の功に報いるために創設された配偶者控除は共働きが1247 万世帯と増加しているため、2017 年政府税制調査会で見直し・廃止を検討している。【考察】就業制限は配偶者控除ではなく社会保障制度や企業の家族手当が影響している事や、基礎的人的控除の簡素化・集約化が必要であると言われており、配偶者控除の廃止は約6000 億円の増収になる。しかし白書では、収入制限がなくなっても44%がパートのまま労働時間を増やすと答えている。そのため配偶者控除が廃止されても、人材確保には繋がらないと考えた。そこで扶養範囲内で労働時間を増やす方策を検討した。神奈川県の一般職パートの最低賃金は1071 円であり、看護職の平均時給は1908 円と837 円の差がある。扶養範囲内で計算すると、月に働ける日数は一般職10.7 日に対し看護職5.9 日となる。そのため一般職同様の日数確保のためには、配偶者控除額を約200 万円に引き上げたい。社会保険料の自己負担が発生するが、年金給付額が月額57000 円から月額154000 円と約3 倍になる。配偶者控除額の引き上げにより税制上の控除幅が広がり、新規養成数を増やさず労働力を最大限に活用できる。早急な看護職確保のためにも、看護職の配偶者控除額を103 万円から200 万円に引き上げる事を提案する。