第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演37群 看護職の心の働きとその対処①

2023年11月9日(木) 14:30 〜 15:30 第8会場 (G314+G315)

座長:山下 千夏

[口演Y-37-1] 呼吸困難感を訴えるがん患者の看護に対する看護師の困難感

丸山 智弘, 吉野 仁美, 小林 明日香 (宮崎県立日南病院)

キーワード:呼吸困難感、看護師の困難感、がん患者

【目的】呼吸困難感を訴えるがん患者の看護に対する看護師の困難感を明らかにし、看護の示唆を得ることを目的とした。【方法】2022 年8 ~ 10 月に呼吸困難感を訴えるがん患者の看護の経験のあるB 病棟看護師8 名を対象とした。対象の看護師へインタビューガイドを使用し、個別に半構造化面接を行った。録音したインタビューの逐語録を作成、精読し、看護師の困難感に焦点を当て、コード化した。内容の類似性と相違性について比較検討を繰り返し行い、サブカテゴリー、カテゴリーへ分類した。本研究はA 病院倫理委員会の承認を得て、対象に研究の趣旨、個人情報の保護、データは本研究のみに使用することを説明し、同意を得た。【結果】79 のコード、23 のサブカテゴリー、9 のカテゴリーを抽出した。「混合病棟で煩雑な状況であるがゆえに思うように対応できない」「麻薬や向精神薬を使用しても患者の呼吸困難感が緩和されないこと」「患者の苦痛を最小限にしたい思いと患者の尊厳を守りたい思いとの葛藤」「呼吸困難感を訴える患者家族の対応」「コロナ禍での患者家族との関係構築」「夜間、医師不在によりすぐに呼吸困難への対処ができない」「知識不足や経験不足により呼吸困難を訴える患者への対処の難しさ」「鎮静開始のタイミングや意思決定支援の難しさ」「医師とのコミュニケーション不足によって、患者の呼吸困難に十分に対応できないと感じる」のカテゴリーが明らかになった。【考察】困難感を持つことは、解決することの難しさや戸惑い、葛藤といった負の感情を抱くことを連想させる。一般病棟の看護師は、がん患者の呼吸困難への緩和が充分に行えていないと感じており、ケアに対する困難感は患者とのコミュニケーション不足を生じさせると報告されている。しかし、今回抽出された9 つのカテゴリーから、B 病棟看護師は患者や家族の関りの中で葛藤や戸惑いを抱えながらも、呼吸困難感のある患者の看護に向き合い続けているということが考えられた。これらの困難感は、看護を行う上で看護師が克服すべき課題と捉えると、看護の目標と位置づけることができる。終末期ケアにおいて、カンファレンスは看護の個別性を出すために重要な場であると言われている。そのため、今回の抽出された困難感を患者カンファレンスの視点とし、共有し活かすことが患者および家族への看護の質を向上させると考える。