第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター10群 ポストコロナ社会の看護への示唆~家族看護②~

2023年11月8日(水) 13:15 〜 14:15 ポスター会場 (G1-G4)

座長:山内 京子

[ポスターY-10-2] 終末期患者・家族の意思決定支援場面で看護師が抱いた困難感

―新型コロナウイルス流行下での面会制限において―

川口 紅, 金子 遥香, 今田 有希 (日本赤十字社長崎原爆病院)

キーワード:新型コロナウイルス感染症、終末期患者、面会制限、意思決定支援、困難感

【目的】新型コロナウイルス流行下での面会制限において、看護師が終末期患者や家族の意思決定支援場面で「口頭説明だけで家族へ患者の状態が伝わりにくいこと」や「患者と家族がお互いの意思を語り合える機会を持てないこと」で抱いた困難感を明らかにする。【方法】1.デザイン:半構造化面接法を用いた質的研究 2.研究期間:2022 年2 月~ 11 月 3.対象者:X 病棟看護師10 名。4.データ収集方法:半構造化面接 5.分析方法:山浦晴男氏の質的統合法(KJ 法)6.倫理的配慮: 研究の参加は自由で、辞退をしても不利益を被ることがないことを説明。得られたデータは個人が特定されないよう配慮。データは鍵のかかるロッカーで保管し、研究以外では使用せず研究終了後速やかに破棄。【結果】新型コロナウイルス流行に伴い、《面会制限により患者と家族の希望を実現できない状況》となった。そのため、《患者が抱く思い》や《家族が抱く思い》を受け止め、《患者の状態に応じた介入》を行うことが難しくなった。その結果、《患者と家族がお互いの意思を語り合える機会を持てないことで看護師が抱いた困難感》、《医師と家族のIC セッティングを行う際に看護師が抱いた困難感》、《退院調整時に看護師が抱いた困難感》が聞かれた。これらによって《患者の死後に看護師が抱いた思い》として、もどかしさや後悔が挙げられた。【考察】面会制限により、終末期患者の残された時間に家族が会えなくなることは誰も予測できなかった状況だ。藤田は、「電話で家族に患者の状態を説明しても、実際の患者を想像することは難しい」と述べている。看護師は家族と電話でのコミュニケーションを行ってきたが、実際に面会をすると患者の状態悪化は家族の想像の範疇を超えており、口頭説明だけで状態を伝えることの難しさを感じた。看護師として、患者の意識があるうちに家族と一緒に最期の時を過ごす時間をつくり、直接話す機会を設けたいと思うが、面会制限により実現できないことが看護師の困難感となっていた。また、患者と家族が直接話すことができない状況は、両者の思いを汲み取り意志決定支援をすすめることを困難にする要因となっていると推察した。結論として、意思決定支援場面において、終末期患者と家族が直接会って話すことが大切になっていることが分かった。今後の課題として、面会制限中の説明方法やリモート面会など工夫が必要と考える。