[PA-10-5] ポスター:脳血管疾患等 10「ジャンプが読みたい」という思いに着目した関わり~両側重度運動麻痺から食事自立に向けて~
【はじめに】
上肢の重度運動麻痺を呈した場合,対象者のしたい作業の獲得に難渋するという報告は少なくない.今回,両側重度運動麻痺を呈した症例に対して「ジャンプを読む」という本人がしたい作業に着目し,環境調整を行いつつ残存する上肢機能へ介入したことで機能改善につながり,食事動作の獲得に至ったためここに報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例情報】
A氏 50歳代前半 男性
診断名:左放線冠梗塞 高次脳機能障害 既往:右被殻梗塞 高次脳機能障害 左鎖骨遠位端骨折
元々,右被殻梗塞で入院され,ADL自立を目標に介入を進めていたが,入院24日目に失語症状出現し,左運動麻痺の増悪あり転院し,約2ヵ月半後に左放線冠梗塞として再入院となる.
【初期評価】再入院時の評価
Br.stage(Rt/Lt):Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ/Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ GMT(Rt/Lt):2/1
ROM(Rt/Lt):肩屈曲45° 肩外転30° 肘伸展-25° 手指伸展0°/左側は疼痛強く評価困難
MMSE:実施困難 MAS(Rt/Lt):3/3
残存している上肢機能(Rt):肩甲骨挙上,肩内転,肘屈曲,前腕回内外,手関節掌背屈,手指屈曲
基本動作:3人介助 ADL:全介助(食事は胃瘻,トイレはおむつ対応)
高次脳機能:失語症あり,単語レベルの表出も困難.視覚性・言語性注意ともに低下認める
リクライニング車椅子でようやく坐位保持可能.
両側ともに自動運動はほぼ行えない状態.
【経過】
①自動運動が出来る範囲を拡大する関わり
残存機能に着目した自動介助運動を中心とした機能訓練を行う.
②可能になった自動運動を環境調整にて活かしつつ実動作へつなげる関わり
PSB,万能カフを利用した環境調整にてジャンプを読む動作を自身で行う.
③環境調整による代償を徐々に減らし自動運動での動作獲得へつなげる関わり
PSB,万能カフなしでの漫画を読む動作訓練を行う.
④獲得した上肢機能を環境調整された食事動作の獲得へ汎化する関わり
自助食器やストロー付きコップでの食事介入を行う.
【再評価】変化点を記載
Br.stage(Rt):Ⅲ-Ⅳ-Ⅲ GMT(Rt):3-
ROM(Rt):肩屈曲60° 肩外転45° 肘伸展-5°
MAS(Rt):2
可能になった動作:ストロー付きコップにて飲水,自助食器を利用してゼリー摂取
基本動作:1人介助 ADL:全介助(食事は3食介助にて経口摂取,トイレは2人介助で誘導中)
【今後】
坐位保持及び上肢操作時間の延長,嚥下機能の向上より食事自己摂取の獲得を目指す.
上肢の重度運動麻痺を呈した場合,対象者のしたい作業の獲得に難渋するという報告は少なくない.今回,両側重度運動麻痺を呈した症例に対して「ジャンプを読む」という本人がしたい作業に着目し,環境調整を行いつつ残存する上肢機能へ介入したことで機能改善につながり,食事動作の獲得に至ったためここに報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例情報】
A氏 50歳代前半 男性
診断名:左放線冠梗塞 高次脳機能障害 既往:右被殻梗塞 高次脳機能障害 左鎖骨遠位端骨折
元々,右被殻梗塞で入院され,ADL自立を目標に介入を進めていたが,入院24日目に失語症状出現し,左運動麻痺の増悪あり転院し,約2ヵ月半後に左放線冠梗塞として再入院となる.
【初期評価】再入院時の評価
Br.stage(Rt/Lt):Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ/Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ GMT(Rt/Lt):2/1
ROM(Rt/Lt):肩屈曲45° 肩外転30° 肘伸展-25° 手指伸展0°/左側は疼痛強く評価困難
MMSE:実施困難 MAS(Rt/Lt):3/3
残存している上肢機能(Rt):肩甲骨挙上,肩内転,肘屈曲,前腕回内外,手関節掌背屈,手指屈曲
基本動作:3人介助 ADL:全介助(食事は胃瘻,トイレはおむつ対応)
高次脳機能:失語症あり,単語レベルの表出も困難.視覚性・言語性注意ともに低下認める
リクライニング車椅子でようやく坐位保持可能.
両側ともに自動運動はほぼ行えない状態.
【経過】
①自動運動が出来る範囲を拡大する関わり
残存機能に着目した自動介助運動を中心とした機能訓練を行う.
②可能になった自動運動を環境調整にて活かしつつ実動作へつなげる関わり
PSB,万能カフを利用した環境調整にてジャンプを読む動作を自身で行う.
③環境調整による代償を徐々に減らし自動運動での動作獲得へつなげる関わり
PSB,万能カフなしでの漫画を読む動作訓練を行う.
④獲得した上肢機能を環境調整された食事動作の獲得へ汎化する関わり
自助食器やストロー付きコップでの食事介入を行う.
【再評価】変化点を記載
Br.stage(Rt):Ⅲ-Ⅳ-Ⅲ GMT(Rt):3-
ROM(Rt):肩屈曲60° 肩外転45° 肘伸展-5°
MAS(Rt):2
可能になった動作:ストロー付きコップにて飲水,自助食器を利用してゼリー摂取
基本動作:1人介助 ADL:全介助(食事は3食介助にて経口摂取,トイレは2人介助で誘導中)
【今後】
坐位保持及び上肢操作時間の延長,嚥下機能の向上より食事自己摂取の獲得を目指す.