第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

呼吸器疾患

[PC-2] ポスター:呼吸器疾患 2

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PC-2-2] 急性期病院の肺炎患者の転帰先に影響を与える因子

大西 斉1, 上野 芳也1, 戸田 芙美1,2 (1.藤田医科大学岡崎医療センター, 2.藤田医科大学リハビリテーション医学I講座)

【はじめに】
肺炎は日本人の死因第3位で,高齢者人口の増加で肺炎患者が更に増える可能性があり,肺炎患者に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)の必要性が高まっている.肺炎患者に対するリハビリは転帰や予後,生活の質の改善に有効である.今回我々は急性期病院の肺炎患者の転帰先に与える因子について検討した.
【対象・方法】
2021年4月から2022年3月に当院に入院し,肺炎の診断を受けた患者でリハビリを実施した182名を対象とした.182名の中で自宅以外から入院した患者45名,死亡例26名を除外し,自宅から入院した111名(誤嚥性肺炎29名,誤嚥性肺炎以外の肺炎82名)を分析対象とした.111名の転帰先を自宅退院群(以下,自宅群)72名と非自宅退院群(以下,非自宅群)39名に層別化し,パラメータを比較した.年齢,在院日数, Physical Therapy(以下,PT)1日提供単位数,Occupational Therapy(以下,OT)1日提供単位数, Speech Therapy(以下,ST)1日提供単位数を対応のないt検定で比較した.また,入退院時のFunctional Independence Measure運動項目(以下,FIMM),入退院時のFIM認知項目(以下,FIMC), FIMM下位項目をMann-Whitney U検定で比較した.有意水準は5%以下とした.
【結果】
自宅群72名の年齢は80.6±9.8歳,非自宅群39名は83.2±10.4歳で,有意差はなかった(P=0.202).在院日数は自宅群22.0±16.5日より非自宅群34.8±24.0日で有意に長かった(P=0.001).PT1日提供単位数は自宅群が1.6±0.4単位,非自宅群が1.5±0.4単位であり(P=0.321),ST1日提供単位数は自宅群が1.5±0.3単位,非自宅群が1.5±0.4単位といずれも差はなかった(P=0.444).一方でOT1日提供単位数は自宅群が1.5±0.4単位に対して,非自宅群が1.3±0.3単位と有意に少なかった(P=0.009).また,入院時FIMM(中央値)は自宅群が35.0点に対して,非自宅群が20.0点と低い傾向にあり (P=0.080),退院時FIMM(中央値)は自宅群が58.0点に対して,非自宅群が30.0点と有意に低かった(P=0.003).さらに一部のFIM下位項目で,自宅群と比較して非自宅群で有意に低かった.詳細は自宅群/非自宅群の入院時FIM(中央値)食事(4.0点/1.0点)(P<0.001),FIM排便(5.0点/1.0点)(P=0.006)であった.また自宅群/非自宅群の退院時FIM(中央値)食事(5.5点/1.0点)(P<0.001),FIM排便(6.0点/2.0点)(P<0.001),FIMトイレ動作(5.0点/2.0点)(P<0.001),FIM排尿(6.0点/2.0点)(P<0.001),FIMトイレ移乗(5.0点/3.0点)(P<0.001)であった.
【考察】
自宅退院する上でADLの自立度が影響する可能性が示唆された.特に介護負担が大きいトイレ関連動作の介助量は自宅退院する上で重要な因子と考えられる.また, OTの専門分野であるトイレへのアプローチの実施がトイレの自立度向上や自宅退院に繋がる可能性がある.今後は病前ADLの詳細や具体的な訓練内容の調査が必要であると考える.