第57回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PI-8-2] 地域での発達支援への作業療法士の参画と協働

中嶋 鮎 (合同会社anomira-あの名曲の作者が嫉妬する未来を-)

【はじめに】
 近年,特別支援教育を必要とする子どもや療育機関を利用する子どもは増加傾向にある.発達領域の作業療法士(以下OT)が働く環境も年々変化し,医療,福祉,地域に加え,教育や保育分野での関わりも増えている.筆者は群馬県北部地域の保健センターで,月1回の乳幼児の検診後のフォローとして行われている集団指導と個別指導の事業に参加している.今回,当該保健センターとその地域の児童発達支援センターより保健師及び施設職員と家族向けに研修の依頼を受けた.依頼内容は運動発達についてであった為,定型発達を基に運動発達から学ぶ感覚認知的要素も加え実施した.研修後の質疑応答やOTへの要望を踏まえ,地域の子どもの発達に関わる専門職とOTとの協働,世代交代も含めた円滑な地域でのOT活動について考察した.
【方法】
 研修内容についての質疑応答のまとめ,及び研修会に参加した保健師,保育士,その他施設職員13名から今後地域での事業においてOTに求めることの聞き取りを実施した.得られた意見に対しては,事業所及び研修会参加者に同意を得て使用した.
【結果】
 研修の内容は運動技能の発達における反射反応の位置づけ,月齢に応じた生活や遊びの中で獲得される運動と認知発達について,特性のある子どもの感覚や認知機能を育てる遊びについてであった.内容に対する質疑応答では,運動面は粗大運動の遅れ,体幹機能やバランス,運動発達の支援の方法が挙げられ,感覚や認知面は,感覚と視知覚発達と遊びの関係,書くことの発達,認知学習の進め方,記憶,行動の順序だて等が挙げられた.また,落ち着きの無い子どもの支援方法,集団活動の内容と段階付け,能力差のある集団の活動内容,集団内の個別支援方法,家族への助言方法,遊びの広げ方等も挙げられた.OTへ求める事は,発達段階に応じた運動及び認知学習課題の提案と選定,保健師等施設職員への専門的な研修の協力,検診時の観察評価,園へのコンサルテーション事業への参加,家遊びの指導,乳幼児期から学童期に向けて認知発達を意識した生活や遊びの中での課題提供等であった.
【考察】
 当地域は前任のOTが事業開始時より参加しており,数十年に渡り集団の構成や職員の役割分担,活動の内容を多職種と協働しながら実施してきた.事業には,保健師,保育士,幼稚園教諭,通級指導教室の教員,言語聴覚士,心理士等も参加しており各職員の連携が円滑である.筆者は2年前より引継ぎ,保健師等も世代交代しながら継続しているが,それまで培われた質の高い支援方法や連携も引き継がれ,サービスの質の高さが一貫している事がこの地域の支援体制の特徴であると感じた. 
 今回,意見をまとめる中で多職種がOTへ求めている事は,運動や活動を実行する為に必要な感覚認知面の要素やプログラムの段階付けの方法や取り入れ方,特性を持つ子どもの集団の中での具体的な支援方法であったが,参加者は子どもの発達過程や感覚認知について,専門職の垣根を超えた理解ができており,より具体的な支援方法についての質問が多かった.OTだけでなく多職種が世代交代をしながら協働する上では,OTの専門性を活かすだけでなく,各職種間の専門性の理解が必要である.地域で継続的な支援をしていくために,職員も含めた1つ集団のとしてのスキルアップができ,それを次世代へ継承できている事が現在の活動をより良いものにしているのではないか.