[PJ-6-2] 重症低栄養状態のフレイル高齢者における外来作業療法の経験
【背景】
リハビリテーション(リハ)栄養の概念が普及しつつあるが,作業療法士が積極的に栄養評価含め介入した報告は少ない.今回,フレイル高齢者の外来作業療法にて体重のモニタリングを用いてリハ栄養介入が行え,身体機能,ADLの改善が得られたため報告する.なお,症例には趣旨を説明し,本報告の同意を得た.
【対象】
症例は70歳代の女性(身長150㎝,体重27.7㎏)で慢性気管支炎の診断を受けており,1年前より呼吸困難出現した.6か月前には食欲低下が見られ,徐々に身体機能が低下し,入浴も行えていなかった.X年に体動困難,低BMI(12.3㎏/㎡),体重減少(12.6%/6カ月)にて当院外来受診し,同日リハ(PT・OT・ST)介入となった.初期評価時は日本語版フレイル基準(J-CHS)が5つ該当し,改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)は18点でフレイルであった.身体機能は5回立ち上がりテスト(SS-5)が13.45秒,5m歩行テスト(5MWT)が5.98秒,握力が9.4㎏と低値であり,骨格筋量は下腿周囲径(CC)が22㎝,骨格筋指数(SMI)は3.73㎏/㎡とサルコペニアであった.ADLは長崎大学呼吸器日常生活活動評価表(NRADL)が50点であった.栄養評価はMini Nutritional Assessment Short-Form(MNA-SF)が5点であり,Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準にて重症の低栄養と診断された.介護保険は未申請の状態であった.
【方法および経過】
身体機能,ADL能力改善目的に外来リハに1回/週に通院し,6か月で4㎏の体重増加を目標とし,経時的変化がわかるようにOT介入時に1回/週に体重測定を行った.低負荷の筋力訓練,ADL指導,呼吸法の指導などの身体機能訓練と並行し,管理栄養士と協働して食事摂取状況の聴取や摂取内容の検討,提示を行った.まずは200kcal/日の栄養摂取量の増加のため経口的栄養補助(ONS)の導入を開始した.介入12週目には,5MWTが3.87秒,介入16週目にはSS-5が6.38秒,NRADLが80点となり,身体機能,ADLの改善がみられた.しかし体重は27.2㎏と停滞していたため,日中の活動量と摂取栄養量が一致していないことを検討し,初回介入時のONSの提示内容より栄養摂取量を200kcal/日の増加を提案した.
【結果】
32週経過時では,J-CHSは1つのみ該当し,HDS-Rは25点とフレイルが改善した.体重は31.7㎏と増加した.BMIは14.1㎏/㎡,握力は9.4㎏,CCは24㎝,SMIは3.91㎏/㎡と低値は残存したが,5MWTは3.25秒,SS-5は6.32秒,NRADLは100点と身体機能,ADLの改善を認めた.
【考察】
体重は誰にとっても身近な測定であり,栄養状態を評価する方法の一つで簡便な評価である.しかし,その体重増加に必要なカロリーは高齢者で8,800~22,600kcalと幅が広く,その管理には管理栄養士と協働した個別対応が必要である.本症例は初期時,低栄養状態で,フレイルやサルコペニアの状態でもあった.そこで,作業療法士による生活状況,身体機能の情報を基に医師や管理栄養士と段階的な栄養摂取,リハ訓練を計画することで,多くの評価数値の向上につながった.今回は明らかな低栄養状態の症例であったが,フレイル等の高齢者は外来通院者であっても栄養的視点を持ち,評価して訓練を進めることが重要と考えられた.その際,体重評価を栄養のゴール設定として用いることは,明確な指標となり,目標数値を患者と共有しやすく有用と考えた.
リハビリテーション(リハ)栄養の概念が普及しつつあるが,作業療法士が積極的に栄養評価含め介入した報告は少ない.今回,フレイル高齢者の外来作業療法にて体重のモニタリングを用いてリハ栄養介入が行え,身体機能,ADLの改善が得られたため報告する.なお,症例には趣旨を説明し,本報告の同意を得た.
【対象】
症例は70歳代の女性(身長150㎝,体重27.7㎏)で慢性気管支炎の診断を受けており,1年前より呼吸困難出現した.6か月前には食欲低下が見られ,徐々に身体機能が低下し,入浴も行えていなかった.X年に体動困難,低BMI(12.3㎏/㎡),体重減少(12.6%/6カ月)にて当院外来受診し,同日リハ(PT・OT・ST)介入となった.初期評価時は日本語版フレイル基準(J-CHS)が5つ該当し,改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)は18点でフレイルであった.身体機能は5回立ち上がりテスト(SS-5)が13.45秒,5m歩行テスト(5MWT)が5.98秒,握力が9.4㎏と低値であり,骨格筋量は下腿周囲径(CC)が22㎝,骨格筋指数(SMI)は3.73㎏/㎡とサルコペニアであった.ADLは長崎大学呼吸器日常生活活動評価表(NRADL)が50点であった.栄養評価はMini Nutritional Assessment Short-Form(MNA-SF)が5点であり,Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準にて重症の低栄養と診断された.介護保険は未申請の状態であった.
【方法および経過】
身体機能,ADL能力改善目的に外来リハに1回/週に通院し,6か月で4㎏の体重増加を目標とし,経時的変化がわかるようにOT介入時に1回/週に体重測定を行った.低負荷の筋力訓練,ADL指導,呼吸法の指導などの身体機能訓練と並行し,管理栄養士と協働して食事摂取状況の聴取や摂取内容の検討,提示を行った.まずは200kcal/日の栄養摂取量の増加のため経口的栄養補助(ONS)の導入を開始した.介入12週目には,5MWTが3.87秒,介入16週目にはSS-5が6.38秒,NRADLが80点となり,身体機能,ADLの改善がみられた.しかし体重は27.2㎏と停滞していたため,日中の活動量と摂取栄養量が一致していないことを検討し,初回介入時のONSの提示内容より栄養摂取量を200kcal/日の増加を提案した.
【結果】
32週経過時では,J-CHSは1つのみ該当し,HDS-Rは25点とフレイルが改善した.体重は31.7㎏と増加した.BMIは14.1㎏/㎡,握力は9.4㎏,CCは24㎝,SMIは3.91㎏/㎡と低値は残存したが,5MWTは3.25秒,SS-5は6.32秒,NRADLは100点と身体機能,ADLの改善を認めた.
【考察】
体重は誰にとっても身近な測定であり,栄養状態を評価する方法の一つで簡便な評価である.しかし,その体重増加に必要なカロリーは高齢者で8,800~22,600kcalと幅が広く,その管理には管理栄養士と協働した個別対応が必要である.本症例は初期時,低栄養状態で,フレイルやサルコペニアの状態でもあった.そこで,作業療法士による生活状況,身体機能の情報を基に医師や管理栄養士と段階的な栄養摂取,リハ訓練を計画することで,多くの評価数値の向上につながった.今回は明らかな低栄養状態の症例であったが,フレイル等の高齢者は外来通院者であっても栄養的視点を持ち,評価して訓練を進めることが重要と考えられた.その際,体重評価を栄養のゴール設定として用いることは,明確な指標となり,目標数値を患者と共有しやすく有用と考えた.