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[PEM29-14] 外微分形式による解析力学:ハミルトン・ヤコビ方程式と流体力学
キーワード:外微分形式, 解析力学, ハミルトン・ヤコビ方程式, 流体力学
電磁場や流体などの空間に連続的にひろがる場の解析力学は、普通、時間をパラメーターとし、場を無限自由度の力学変数とみなして構築される。これは有限個の自由度をもつ系の時間発展を追う解析力学の自然な拡張であるが、電磁場などの場合、ある特定の系での時間座標をパラメーターとして使うため、相対論的なあつかいでは明示的なローレンツ普遍性が失われるという欠点がある。また。このアプローチでは、電磁気などとゲージ場の場合にゲージ自由度に対応して変数の自由度が増えるため、なんらかの拘束条件を追加しなければ発展方程式の数が足りなくなってしまうという問題もある。このため、電磁場の正準理論はクーロンゲージなどのローレンツ普遍性を犠牲にしたゲージ固定をするか、あるいはディラック括弧のような複雑な数学テクニックを使うかなどしてこの問題を避けている。前回の学会で,Cartanによって案出された外微分形式の手法を使って,時間と空間を対等のパラメーターとして扱い,明示的にローレンツ不変な解析力学を構築する方法について報告した。この手法により,ゲージ固定などをしなくても明快にゲージ場の解析力学を構築できるという利点もある。今回はそのハミルトン・ヤコビ方程式への応用と,流体力学への適用可能性について報告する。ハミルトン・ヤコビ方程式は解析力学の教科書の最後にでてくる,あまり実用性のないわけのわからない数学手法というイメージがあるが(そしてそれは多くの場合正しいが),古典力学から量子力学への橋渡しとして重要な意味をもつ。また,理論それ自体として,実際の応用計算には不適でも,解析力学全体の根本的理解には必須な概念である。本研究では微分形式を使った解析力学の応用としてハミルトン・ヤコビ方程式を導出した。もうひとつの話題として,前回の学会で発表した内容は電磁気学への応用であったが,他の連続体への応用可能性もある。相対論的な流体の解析力学表現については過去にいくつか試みがあったが,ローレンツ普遍性に問題があった。発表では本研究の解析力学的手法を流体力学に応用する可能性についても議論する。Kambe (2010)によれば,流体力学のEular方程式は変数を適当に選ぶことによってマックスウェル方程式と同じ形に表現できる。これを応用して,流体力学の解析力学を構築できる可能性がある。参考文献: 中村匡,物性研究, 2003(http://hdl.handle.net/2433/97295) T. Kambe 2010, Fluid Dyn. Res. Y. Kaminaga, Electronic Journal of Theoretical Physics, 2012 (http://www.ejtp.com/ejtpv9i26)