日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM34_1PO1] プラズマ宇宙:星間・惑星間空間,磁気圏

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 5階ポスター会場 (5F)

コンビーナ:*松清 修一(九州大学大学院総合理工学研究院流体環境理工学部門)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)

18:15 〜 19:30

[PEM34-P01_1] 磁気圏型RT-1装置における高ベータプラズマ生成と計測器開発

*西浦 正樹1吉田 善章1齋藤 晴彦1矢野 善久1川面 洋平1野上 智晃1山崎 美由梨1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:プラズマ, 磁気圏, プラズマ計測, プラズマ加熱

磁気圏型プラズマ装置(ring trap 1: RT-1)は新しい概念の核融合実験装置である.実験室において真空容器内に磁気浮上させた超電導コイルによりダイポール磁場を発生させ,その磁場中に閉じ込められたプラズマの特性を理解するための研究を進めている.ここ数年,電子サイクロトロン加熱(electron cyclotron heating: ECH)により,数10keVの高エネルギー電子の生成やその電子が引き起こす不安定性の励起,密度分布のピーキングなど多様な現象が観測されている[1, 2].ECH入射パワーの増強を行い,従来の運転密度領域である1017m-3を更に拡大させるための最適化実験(ビーム偏波制御,収束性の向上)を進めている.生成したプラズマはミリ波干渉計を用いた線平均密度計測により密度評価を行っている.その結果入射ビームの最適化により線平均密度で6.2×1017m-3かつ電子反磁性は5.6 mWbにまで到達した.この値は磁気圧力に対するプラズマ圧力の比であるベータ値がおおよそ100%近くに達していると予想される.このようなプラズマに対し,密度上昇に伴う空間構造の変化や密度ピーキングを調べるためにマイクロ波反射計の整備を行い,初期結果を得ており,解析を進めている.
ECHを用いた場合,電子加熱は十分行えるがイオン温度は低い状態にある.そこで3ターンループアンテナを用いた遅波によるイオンサイクロトロン加熱(ion cyclotron heating: ICH)を行っている.ECH単独で電子密度を1018m-3オーダーに上昇させた場合,加熱効率が向上し,イオン加熱によるイオン温度が向上することが期待できる.ICHによるイオン温度上昇をエネルギーアナライザ―により観測している.
ICHによるイオン加熱時により詳細なイオンの加熱情報を測定するために,イオンのエネルギーとピッチ角情報を得ることができるイオンプローブによる測定の準備を進めている.元々は核融合装置内で発生した高エネルギーイオンの損失過程を計測するために使われていたが,その手法をRT-1プラズマのイオンのエネルギー分布測定に適用することを念頭に開発を進めている.このイオンプローブは先端に設けたピンホール,その内部に埋め込まれたシンチレータから構成されている.ピンホールからプローブヘッド内に侵入したイオンはプローブヘッド内のシンチレータ上に発光分布を作る.その発光分布を高感度なEMCCDカメラにより観測することでイオンのエネルギーとピッチ角を同時に得ることが可能になる.
発表では先に述べたRT-1におけるECHの最適化によるパラメータ領域の拡大,イオンプローブ設置に向けた進捗状況,及び今後の予定について報告する.

参考文献
[1] Z. Yoshida et al., Phys. Rev. Lett. 104 (2010) 235004.
[2] H. Saitoh et al., Nucl. Fusion 51 (2011) 063034.