10:00 〜 10:15
[SIT36-05] 電磁アクロスにおける大規模データ解析の刷新に向けて
キーワード:アクロス, 電磁探査, 火山, ビッグデータ
本セッションの熊澤ら,小川ら,および藤井らの発表で提示されているように,我々は休眠中であった電磁アクロスの開発研究を再開する.本発表では電磁アクロスにおける観測の方法と観測データから周波数伝達関数情報を抽出する手順について,静岡大学で行われた試験送信から得られたデータを事例として再検討する.バイアスや雑音,欠測などの異常を含む膨大な生の観測データから,的確な誤差評価が付加された伝達関数情報を抽出するシステムの刷新につなげることがその目的である.
アクロスは,人工的に生成した電磁波や弾性波を複数の送信点から探査目標に対して常時発信し,複数の受信点でその応答を測定する能動的な観測システムである.送信される信号は位相を精密にした周期信号であり,また各送受信点がGPS時計を利用して数十ナノ秒からマイクロ秒の精度で同期している.これにより,1) 伝達関数を測定値として取り扱え,またその信頼度評価が可能である,2) 高いS/N比のデータを取得できる,3) 構造・物性の時間変化の観測ができる,という利点がある (横山他, 2000).
電磁波を用いて地下の電気的構造を求める電磁アクロスは,(小川・熊澤, 1996) によりその概念が提案された.その探査手法の原理とTDEM法など既存の電磁探査法との関係は,(横山他, 2000) にまとめられている.また,東濃鉱山 (岐阜県土岐市) や静岡大学 (静岡県静岡市) において,接地電極を用いた試験送信が行われている (中島他, 2000),(中島, 2010).さらに今後は東京工業大学地球生命研究所と火山流体研究センターとの連携等を視野に入れて,草津白根山をテストフィールドとした実用化研究の計画が構想されつつある.これに向けて,従来の送信試験によって得られたデータを詳細に解析し観測方法やデータ解析の手順を再評価することで,刷新的な改善につながる批判的・建設的な見解を導くことが本発表の目的である.
本発表では静岡大学で2007年から2012年までに行われた電磁アクロス試験送信によって得られた観測データを事例として,その観測方法や解析手順について再検討する.この試験に用いられた送信点は,静岡大学構内に設置された600mの1対の接地電極による電流ダイポールである.観測点は送信点より17km離れた清水北部電場観測点,18km離れた俵峰磁場観測点,7km離れた麻機磁場観測点の3点である.観測データには停電や機器の故障などのため欠測が含まれるものの,観測期間は最長で5年あり,総データ量は十数TBにおよぶ.
具体的に着目する課題として,地表近くの変動に起因する雑音の除去について検討している.電極接地によるダイポール送信では,地表近くの変動 (季節変動,年変化,降雨など) が計測される伝達関数に大きく影響する.このため,データのスタッキングによって統計的に雑音を除去する際にも特別に考慮しなければならない.また観測点に影響するような近隣の微小地震や気象などの補助データを用いて,これらの変動をデータから除去する必要があると考えられる.データの再解析を通して,こうしたデータクリーニングに関する有用な知見を得ることが目的である.また,電極接地によるダイポール送信もこのような変動の主要な原因の一つと考えられている.そのため草津白根テストフィールドにおいてはループアンテナによる信号送信も検討されているが,こうした観測の方法についてデータ解析により環境依存の不安定の程度を検討し,抜本的な改善につながる見解を導くことも主眼においている.
アクロスは,人工的に生成した電磁波や弾性波を複数の送信点から探査目標に対して常時発信し,複数の受信点でその応答を測定する能動的な観測システムである.送信される信号は位相を精密にした周期信号であり,また各送受信点がGPS時計を利用して数十ナノ秒からマイクロ秒の精度で同期している.これにより,1) 伝達関数を測定値として取り扱え,またその信頼度評価が可能である,2) 高いS/N比のデータを取得できる,3) 構造・物性の時間変化の観測ができる,という利点がある (横山他, 2000).
電磁波を用いて地下の電気的構造を求める電磁アクロスは,(小川・熊澤, 1996) によりその概念が提案された.その探査手法の原理とTDEM法など既存の電磁探査法との関係は,(横山他, 2000) にまとめられている.また,東濃鉱山 (岐阜県土岐市) や静岡大学 (静岡県静岡市) において,接地電極を用いた試験送信が行われている (中島他, 2000),(中島, 2010).さらに今後は東京工業大学地球生命研究所と火山流体研究センターとの連携等を視野に入れて,草津白根山をテストフィールドとした実用化研究の計画が構想されつつある.これに向けて,従来の送信試験によって得られたデータを詳細に解析し観測方法やデータ解析の手順を再評価することで,刷新的な改善につながる批判的・建設的な見解を導くことが本発表の目的である.
本発表では静岡大学で2007年から2012年までに行われた電磁アクロス試験送信によって得られた観測データを事例として,その観測方法や解析手順について再検討する.この試験に用いられた送信点は,静岡大学構内に設置された600mの1対の接地電極による電流ダイポールである.観測点は送信点より17km離れた清水北部電場観測点,18km離れた俵峰磁場観測点,7km離れた麻機磁場観測点の3点である.観測データには停電や機器の故障などのため欠測が含まれるものの,観測期間は最長で5年あり,総データ量は十数TBにおよぶ.
具体的に着目する課題として,地表近くの変動に起因する雑音の除去について検討している.電極接地によるダイポール送信では,地表近くの変動 (季節変動,年変化,降雨など) が計測される伝達関数に大きく影響する.このため,データのスタッキングによって統計的に雑音を除去する際にも特別に考慮しなければならない.また観測点に影響するような近隣の微小地震や気象などの補助データを用いて,これらの変動をデータから除去する必要があると考えられる.データの再解析を通して,こうしたデータクリーニングに関する有用な知見を得ることが目的である.また,電極接地によるダイポール送信もこのような変動の主要な原因の一つと考えられている.そのため草津白根テストフィールドにおいてはループアンテナによる信号送信も検討されているが,こうした観測の方法についてデータ解析により環境依存の不安定の程度を検討し,抜本的な改善につながる見解を導くことも主眼においている.