17:15 〜 18:30
[SSS32-P11] 地震によって生じる地球内部の歪・応力の理論計算:丸い地球における相反定理の有効性
キーワード:地震時変形、内部変形、球対称地球、相反定理
地震によって地球の内部に生じる応力や歪などの内部変形は、これまでOkada (1992) によって導かれた一様半無限媒質モデルの公式を用いて推定されてきた。クーロンの静的応力変化の推定はその一例である。しかし、2011年東北沖地震による応力変化が震央距離400kmの地点でも0.1barに達したように(Toda et al., 2011)、超巨大地震によって生じる広範囲に及ぶ応力・歪変化は、地球の曲率や成層構造を考慮したより現実的な丸い地球モデルを用いて推定する必要がある。丸い地球モデルで地震時の変形を計算するための定式化自体は、Takeuchi & Saito (1972) によってなされた。しかし、実際に計算機で内部変形の計算を実現するためにはいくつかの課題を解決する必要があった。その一つが桁落ちの問題である。我々は、Okubo (1993) の相反定理を拡張することによって、この桁落ちの問題が解決されることを見いだした。本発表では、従来のオーソドックスな方法では桁落ちの問題が不可避であることと、相反定理を用いた方法では桁落ちの問題が回避されることを示す。
Takeuchi & Saito (1972) の定式化に従って、変位、応力などを球面調和関数で展開すると、運動方程式などの支配方程式は、半径に関する一階の非斉次常微分方程式に帰着する。この微分方程式を解くために、オーソドックスな解法では、(i) まず斉次方程式の解を求め、(ii) 次に特解を求め、(iii) 最後に地表での境界条件を満たすように斉次解と特解を足し合わせる。今、震源の半径をrsとし、解を求めたい場所の半径rp(>rs、つまり震源の方が深い)とすると、求めたい解は (rs/rp)n(nは球面調和関数の次数)のオーダーとなる。それに対して、(i)と(ii)のプロセスで求められる斉次解と特解は、(rp/rs)n のオーダーとなる。つまり、(iii)のプロセスでは、本来の解よりも(rp/rs)n/(rs/rp)n=(rp/rs)2n 倍だけ大きいもの同士を足し合せていることになり、次数nが大きくなると桁落ちの問題が避けられない。例えば、深さ20km (rs=6351 km) の震源によって深さ10km (rp=6361 km)に生じる変形を計算する場合、n=8,000で、(rp/rs)2n~1012となる。数値的な計算でもn=8,000程度から桁落ちの問題が無視できなくなり、実際にこの現象が確認された。
一方、相反定理を用いた方法では、(a) まず潮汐等、外部に起源を持つ励起源によって半径rsに生じる変形を表す解x1を得、(b) 次に解を求めたい半径rpで単位ステップを持つような解x2を得る。これらは数値積分によって容易に得られる。(c) 最後に相反定理から、求めたい解が解x1とx2の「掛け算」で得られる。つまり、足し算によって生じるような桁落ちの問題を回避することが出来る。
Takeuchi & Saito (1972) の定式化に従って、変位、応力などを球面調和関数で展開すると、運動方程式などの支配方程式は、半径に関する一階の非斉次常微分方程式に帰着する。この微分方程式を解くために、オーソドックスな解法では、(i) まず斉次方程式の解を求め、(ii) 次に特解を求め、(iii) 最後に地表での境界条件を満たすように斉次解と特解を足し合わせる。今、震源の半径をrsとし、解を求めたい場所の半径rp(>rs、つまり震源の方が深い)とすると、求めたい解は (rs/rp)n(nは球面調和関数の次数)のオーダーとなる。それに対して、(i)と(ii)のプロセスで求められる斉次解と特解は、(rp/rs)n のオーダーとなる。つまり、(iii)のプロセスでは、本来の解よりも(rp/rs)n/(rs/rp)n=(rp/rs)2n 倍だけ大きいもの同士を足し合せていることになり、次数nが大きくなると桁落ちの問題が避けられない。例えば、深さ20km (rs=6351 km) の震源によって深さ10km (rp=6361 km)に生じる変形を計算する場合、n=8,000で、(rp/rs)2n~1012となる。数値的な計算でもn=8,000程度から桁落ちの問題が無視できなくなり、実際にこの現象が確認された。
一方、相反定理を用いた方法では、(a) まず潮汐等、外部に起源を持つ励起源によって半径rsに生じる変形を表す解x1を得、(b) 次に解を求めたい半径rpで単位ステップを持つような解x2を得る。これらは数値積分によって容易に得られる。(c) 最後に相反定理から、求めたい解が解x1とx2の「掛け算」で得られる。つまり、足し算によって生じるような桁落ちの問題を回避することが出来る。