日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS18] 海洋物理学一般

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 104 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:岡 英太郎(東京大学大気海洋研究所)、川合 義美(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:西川 はつみ

11:45 〜 12:00

[AOS18-11] ビンセネス湾沖大陸斜面における高密度陸棚水の混合過程について

*北出 裕二郎1溝端 浩平1嶋田 啓資1 (1.東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科)

キーワード:高密度陸棚水、南極底層水、水塊混合

南極底層水は、高密度陸棚水と周極深層水が大陸斜面域で混合し、沈み込んで形成されると考えられているが、観測も多くないため、混合過程には不明な点も多い。東経110°の南端にはビンセネス湾が位置し、近年、そのビンセネス湾ポリニヤを起源として、南極底層水が形成されていることが示されている。しかし、その研究においても陸棚斜面域での観測は海氷に阻まれ実施できておらず、長期係留観測から新しく形成された南極底層水の沈み込みの発見、陸棚上のバイオロギングと沖合の船舶によるCTDデータを用いた南極底層水の生成量の推定に留まっている。我々は、2014年以降、毎年ビンセネス湾陸棚域での観測を計画してきたが実施できないでいた。2018年1月は当該海域での観測航海時にちょうど陸棚上への海路が開き、陸棚上のポリニヤ域西部の窪地から大陸斜面にかけての観測を実施できた。本研究では、この観測データの紹介と混合過程に関する議論を行う。
陸棚上では、4地点で船舶による海面から海底直上10mまでのCTD(SEB-9Plus)観測、陸棚斜面域ではXCTDによる海底までの水温塩分観測である。当該海域の大陸斜面の傾斜非常に大きく、5マイルで500mから2000mへと急激に深くなっており、この区間をおよそ1マイル毎に6地点で観測した。観測の結果、陸棚上にはKitade et al. (2014)で想定されたいた通りの高密度陸棚水(塩分>34.50;水温<-1.85℃)が観測され、夏季においても高密度陸棚水が大陸棚縁辺まで達していることが確認された。大陸斜面域では、海底直上に薄く(~10m)低温低塩分の水塊が分布していることがわかった。海底直上の水塊は、高密度陸棚水から南極底層水への変質を示すものであり、当該海域がまぎれもなく南極底層水の生成域であることを示した。水温塩分プロファイルから海底境界層の厚みは~6m、海底混合層の厚みは20~25m、鉛直粘性係数は~10-3(m2/s)と見積もられた。本観測結果においては、二重拡散対流の効果は顕著なものではないように見受けられた。しかし、先に研究では高密度陸棚水と周極心象水の混合比率が、温度と塩分で1.4倍程度異なっていたことから、本観測結果との整合性および当該海域での混合と南極底層水に至るまでの過程を解析中である。