日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE13] 再生可能エネルギー分野での地球科学データの可能性

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター)、宇野 史睦(産業技術総合研究所)、島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科、共同)、野原 大輔(電力中央研究所)

[HRE13-P05] 幾何学的、機械学習的アプローチを用いた全天雲画像からの局所太陽光発電量予測の取り組み

*神山 徹1太田 裕貴2高瀬 竜一1吉見 隆1中村 良介1 (1.産業技術総合研究所、2.早稲田大学)

キーワード:太陽光発電、再生可能エネルギー、CNN、ステレオ観測

太陽光発電は再生可能エネルギーとして広く普及が進み、メガソーラーだけでなく多くの小・中規模発電施設の建設・稼働が行われてきている。一方太陽光発電は雲など天気の影響により発電量が変わる不安定な発電であり、単純な太陽高度などに基づく予想とは大きく異なることがしばしば起きる。特に予想が困難な事例として細かな雲(1 kmスケール)が次々に通過するような天気があげられ、雲の通過のたびに発電量が大きく変化し、気象予報による予測と大きく異なってしまった事例が報告されている(板垣ら, 2011, 2012)。細かな雲に対する影響の予測が発電量予測においてカギとなるが、日本における現業の気象予報では2.5kmの空間解像度が用いられ、1km程度の大きさの雲位置把握は困難となっている。観測においてもひまわり8号の持つ500m分解能は一つ一つの太陽光発電施設のスケール(メガソーラーでも1 x 1 km)と比較するとやはり十分細かいとは言えない。このようにシミュレーション、気象観測データの空間解像度に比べ、太陽光発電に影響を与える雲のスケールがより小さいことが一つ一つの発電施設における発電予測を困難にする要因の一つとなっている。

このような困難に対し、本研究では100mを切るような細かな空間分解能で雲位置を同定し短時間(例えば30分後, 1時間後)の太陽光発電量予測を目指し、地上に設置した高解像度全天カメラ画像からデータの収集を行い、得られたデータから幾何学的(ステレオ視による雲位置3次元決定と移動予測)、および経験的(機械学習に基づく将来予測)に発電量予測に取り組んだ。観測では産業技術総合研究所・つくばセンター敷地内に約400m離して設置した2つの全天カメラ画像を用い、ステレオ計測に必要なシステムの構築を行うとともに、6秒間隔で得られている所内発電量データの収集を行った。カメラの姿勢は星像観測により決定し、数百m離れたカメラ間においてもステレオ解析条件を達成している。
ステレオ計測の結果、1300 m ~ 3000 mの高度に位置する雲の3次元位置が得られた。また時間的に連続した画像組に対して同様の測定を行うことで3次元位置を推定した雲の動きもとらえることができている。また同時に時系列に並んだ雲画像と同様に時系列に並んだ発電量データ間の対応関係を学習することにより、雲画像から発電量を出力するシステムを開発し、曇天時では高精度な発電量推定値を得ることに成功している。本発表では全天カメラに基づく幾何学的、機械学習的両アプローチに関する取り組みについて紹介を行うとともに、観測期間の実際の発電量との比較による発電量予測可能性についても議論を行う。