15:00 〜 15:15
[SCG48-32] 多孔質媒質中の乱流におけるk-εモデルの解軌道
キーワード:多孔質媒質、k-epsilonモデル、解軌道
断層岩のような多孔質媒質中における乱流は動的地震破壊過程に影響を与え、多くの研究者の関心を集めてきた。それを取り扱うモデルの中で、k-εモデルというものが幅広く用いられてきた。ここでkは乱流エネルギーであり、εはkの単位時間当たりの散逸率である。しかしながら、それらの初期値が最終状態に与える影響についての解析的取り扱いはなされていない。
1次元で均質な多孔質媒質を考え、等方的な乱れを考える。また流体の密度ρと空隙率φも一定であるとし、φkとφεの統計平均を以下ではk及びεと書く。これらの仮定から、epsilon=ck uD k /\sqrt{K}で与えられるk-ε相空間上の直線がkとεの共通のヌルクラインになることに注意する。ここでckは正定数、uDは平均ダルシー速度、Kは透水係数である。このヌルクラインはSuzuki (2017)に見られるように線状のアトラクタかリペラーになる。なお、直線epsilon=0(k軸)もεに対するヌルクラインになる。
解軌道の解析的表現はepsilon=epsilon0 (k/k0)^C2と得られる。ここでC2は定数でおよそ1.9である。この結果を用いて、先の共通のヌルクラインepsilon=ck uD k/\sqrt{K}は解軌道のアトラクタであることが以下のように示される。まず領域Iというものを相空間上で0< epsilon < ck uD k/\sqrt{K}を満たす領域と定義する。同様に領域IIをepsilon > ck uD k/\sqrt{K}>0を満たす領域とする。また点(k0, epsilon0)を通る解軌道がヌルクラインと交わる点を点 (kf, epsilonf)と定義する。ここでk0, epsilon0はそれぞれkとεの初期値である。これらの定義から、もし(k0, epsilon0)が領域Iにあればk0f及びepsilon0fが成り立つことが分かる。なぜならヌルクライン上ではεがkに比例するのに対して、解軌道上ではεがk^C2に比例しかつC2 >1だからである。同様に、もし(k0, epsilon0)が領域IIにあればk0>kf及びepsilon0>epsilonf を得る。次に、領域I(II)ではkとepsilonが時間と共に増加(減少)することに注意する。これは\partial k/\partial tと\partial epsilon/\partial tが正(負)だからである。従って、もし(k0, epsilon0)が領域I(II)にあるならば、解軌道は右上(左下)方向に動き、時刻無限大でヌルクラインに吸収される。すなわちヌルクラインは(リペラーではなく)線状のアトラクタであることが分かる。定常状態は(k, epsilon)=(kf, epsilonf)である。
流体のみの系に見られる通常の乱流においては、kとεは時刻無限大で消滅するが、上述の取り扱いはその場合にも有効である。通常の乱流はKが無限大の極限で記述されることに注意する。このとき共通のヌルクラインはk軸になり、領域Iが消滅する。ゆえに全ての解軌道が原点に吸収される。有限のKにより、多孔質媒質中では定常状態においても乱流が存在できるのである。
1次元で均質な多孔質媒質を考え、等方的な乱れを考える。また流体の密度ρと空隙率φも一定であるとし、φkとφεの統計平均を以下ではk及びεと書く。これらの仮定から、epsilon=ck uD k /\sqrt{K}で与えられるk-ε相空間上の直線がkとεの共通のヌルクラインになることに注意する。ここでckは正定数、uDは平均ダルシー速度、Kは透水係数である。このヌルクラインはSuzuki (2017)に見られるように線状のアトラクタかリペラーになる。なお、直線epsilon=0(k軸)もεに対するヌルクラインになる。
解軌道の解析的表現はepsilon=epsilon0 (k/k0)^C2と得られる。ここでC2は定数でおよそ1.9である。この結果を用いて、先の共通のヌルクラインepsilon=ck uD k/\sqrt{K}は解軌道のアトラクタであることが以下のように示される。まず領域Iというものを相空間上で0< epsilon < ck uD k/\sqrt{K}を満たす領域と定義する。同様に領域IIをepsilon > ck uD k/\sqrt{K}>0を満たす領域とする。また点(k0, epsilon0)を通る解軌道がヌルクラインと交わる点を点 (kf, epsilonf)と定義する。ここでk0, epsilon0はそれぞれkとεの初期値である。これらの定義から、もし(k0, epsilon0)が領域Iにあればk0f及びepsilon0fが成り立つことが分かる。なぜならヌルクライン上ではεがkに比例するのに対して、解軌道上ではεがk^C2に比例しかつC2 >1だからである。同様に、もし(k0, epsilon0)が領域IIにあればk0>kf及びepsilon0>epsilonf を得る。次に、領域I(II)ではkとepsilonが時間と共に増加(減少)することに注意する。これは\partial k/\partial tと\partial epsilon/\partial tが正(負)だからである。従って、もし(k0, epsilon0)が領域I(II)にあるならば、解軌道は右上(左下)方向に動き、時刻無限大でヌルクラインに吸収される。すなわちヌルクラインは(リペラーではなく)線状のアトラクタであることが分かる。定常状態は(k, epsilon)=(kf, epsilonf)である。
流体のみの系に見られる通常の乱流においては、kとεは時刻無限大で消滅するが、上述の取り扱いはその場合にも有効である。通常の乱流はKが無限大の極限で記述されることに注意する。このとき共通のヌルクラインはk軸になり、領域Iが消滅する。ゆえに全ての解軌道が原点に吸収される。有限のKにより、多孔質媒質中では定常状態においても乱流が存在できるのである。