日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)

[SGD01-P03] 2011年東北沖地震の三ヶ月前から生じていたとされる重力勾配の変化

*蓮實 尚輝1日置 幸介1 (1.北海道大学大学院理学院)

キーワード:GRACE、重力勾配

2002年に打ち上げられた重力計測衛星GRACE (Gravity Recovery And Climate Experiment)は、陸水や雪氷の移動に伴う質量再配分を重力変化として捉えることによって様々な成果を挙げてきた。地震に伴う断層運動も質量を再配分するため重力をわずかに変化させる。なかでも、巨大地震と同時に起こる瞬間的な重力の変化(地震時重力変化)と地震後に起こる長期的な重力の変化(地震後重力変化)は、いくつかの事例でGRACEによる面的な観測が報告されており、地震学に貢献してきた(田中 日置、2017)。

地震に先立って起こる重力変化(地震前重力変化)は今まで本格的な研究対象とされてこなかったが、最近Panet et al. (2018)によって、2011年東北地方太平洋沖地震の数カ月前から重力が有意に変化していた可能性が報告された。Panet et al. (2018)は GRACE衛星データを用いた研究であるが、これまでの研究手法とやや異なる点が三つある。一つ目は、重力そのものではなく、より空間分解能の高い重力勾配の変化に注目した点である。二つ目は重力勾配の変化を広い時間スケールで、かつ広い地域に対して解析を行った点である。三つ目は空間波長が800~1600 kmの重力に注目して解析した点である。本研究は、GRACEのLevel 2データ(球関数の係数)を用いてPanet et al. (2018)の内容を追試したものであり、東北地方太平洋沖地震の数か月前から発生していると報告された重力勾配変化を検証する。その結果、報告された時空間変化に近い重力勾配変化が生じたことを確認した。なお本研究の手法はPanet et al. (2018)のそれと多少異なる部分が残っており、結果についても微妙に異なる部分も見られた。本研究ではさらに2004年スマトラ・アンダマン地震や2010年マウレ地震などで同様の現象がみられるかについても議論する。



参考文献

Panet, I., S. Bonvalot , C. Narteau , D. Remy, and J.-M. Lemoine (2018), Migrating pattern of deformation prior to the Tohoku-Oki earthquake revealed by GRACE data, Nature Geosci., 11, 367-373, Doi:10.1038/s41561-018-0099-3

田中優作、日置幸介(2017)、GRACE地震学ー衛星重力観測による地震研究のこれまでとこれからー、地震 第2輯、69巻, pp.69-85, doi:10.4294/zisin.69.69.