JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] 大気圏ー電離圏結合

コンビーナ:Huixin Liu(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Yue Deng(University of Texas at Arlington)、Loren Chang(Institute of Space Science, National Central University)

[PEM12-P23] Sq・EEJ電流系における6日振動現象に着目した大気圏ー電離圏の上下結合の研究

*高山 久美1三好 勉信1吉川 顕正1 (1.九州大学)

キーワード:6日波、赤道ジェット電流、電離圏、上下結合

大気圏-電離圏-磁気圏の3次元結合系の包括的理解を目指して、MAGDAS(全球的地磁気観測ネットワーク)磁場データを活用したSq-EEJ電流系に於ける大気振動現象の解析を行った。本研究では、対流圏で励起される6日振動現象に着目し、その全球性やその励起特性の季節依存性、太陽活動依存性などについて報告する。

大気波動の一つである6日振動現象は、熱帯対流圏の湿った空気による大気加熱により引き起こされ、春分と秋分に強く発達する季節依存性をもつことが知られている[Miyoshi and Hirooka1999]。赤道ジェット電流(EEJ)は、下層からの大気波動を含む様々な強制機構の影響を受けて変動する「可変性」が、非常に高いことが示唆されており、EEJにおける6日振動現象については、CHAMP衛星、Swarm衛星のEEJ強度データ及びEEJM(EEJ経験モデル)及びMLS測定のジオポテンシャル高度により確認されている[Yamasaki et al., 2018JGR]。更にGPSのTEC(大気圏・電離圏の全電子数)及びAura / MLS測定のジオポテンシャル高度を用いた赤道付近の6日振動現象の分布が明らかにされ、電離圏と下部熱圏の準6日波にほぼ1対1の対応など[Yamasaki et al., 2019 JGR]が示されてきた。しかしながら、Sq-EEJ電流系により励起される地上磁場変動データに顕われることが期待される、大気は波動成分の理解は進んでいない。

そこで本研究では、MAGDASの磁場データを用いてEEJにおける6日振動現象の全球性やその励起特性の季節依存性や太陽活動依存性などの解析を行った。

解析には、九州大学が磁気赤道上の電離圏の現象であるEEJ をリアルタイムで捉えるために独自に開発した指数:EE-indexを用いる。[T.Uozumi et al. 2008]及び[T. Ueno et al. 2008] EE-index はEDst, EU,EL の3つ要素から構成される。EDst は磁気赤道上磁場の全球的にシンメトリックな変動を表わし、EU ・EL はそれぞれEEJとCEJによる磁場の変動成分を示す。本研究では、このEUELデータの2005年1月1日~2019年2月25日分を用いて、EEJにおける6日振動現象を抽出を行った。主な解析手順は以下のとおりである。
各観測点のEUELデータ(1h値)の昼側ピークについて、5-7日間のバンドパスフィルタにより準6日変動成分を抽出。 年間のデータが6割以上ある3つの観測点の結果を比較し、グローバルな現象であるかどうかの検証。 太陽活動指数F10.7との比較による、太陽活動依存性の検証。 季節依存性の検証。
結果として、Sq・EEJ電流系における6 日振動現象は、磁気経度、緯度に関係なくほぼ同時期に発達するグローバルな現象であることにくわえ、太陽活動依存性があることが明らかになった。また、季節依存性についても、大気圏の準6日波がもつ季節依存性と同様の季節依存性があることがわかった。解析の詳細については講演で紹介する。


今後の課題として、グローバルな分布についてより幅広い範囲を見るために中緯度の観測点についても見る必要がある。また、ANCとDAVなど 磁気緯度が近い観測点同士でも、6日振動の振幅に差が出ているため、各観測点の年間の変動傾向を把握し、検証することが必要となる。

   将来的に、大気の熱対流が起源である6日振動現象が電離圏に到達するまでにどのような影響を受け、EEJ変動を励起するのかをGAIAモデル(全大気領域を包含する大気モデルと電離圏モデルとを統合した数値モデル)を駆使して解明することを、九大-GFZグループの共同研究の一貫として遂行する予定である。