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[AAS05-P04] つくばにおける2010年以降のFTIR観測によるバイオマス燃焼由来CO発生源の推定
キーワード:一酸化炭素、フーリエ変換赤外分光計、シアン化水素、バイオマス燃焼、粒跡線解析、FTIR
一酸化炭素(CO)は主に化石燃料の燃焼やバイオマス燃焼、炭化水素の酸化等によって生成される。COは対流圏オゾン発生の前駆物質であるとともに、OHラジカルとの反応によって、様々な大気微量成分の存在量に影響を与えるため、大気化学において極めて重要な物質である。大気中では数週間~2ヶ月程度の寿命を持ち、その存在量や発生源には地域的な大きな偏りが存在する。近年アジア地域からのCOの放出が全球的な濃度変化に大きな影響を与えていることが分かっており、その発生源の推定の高度化が望まれている。つくば(36.1N, 140.1E)においては1998年12月より、Bruker社製高分解能フーリエ変換赤外分光計(FTIR)による太陽赤外線を光源に用いた大気微量成分の観測を行ってきている。本研究では、つくば上空のCOの発生源及び発生地域を明らかにすることを目的として、このFTIRで得られた赤外分光スペクトルから、CO及びシアン化水素(HCN)の高度分布を導出し、COの発生源の推定を行った。大気中のHCNは数年程度の寿命を持ち、主にバイオマス燃焼によって生成するという特徴を用い、本解析ではHCNをバイオマス燃焼のプロキシとして用いた。
2010年4月から2019年5月までの期間について、つくばのFTIR観測スペクトルによるCO及びHCNの高度分布を、インバージョン解析プログラムSFIT4を用いて解析した。得られた高度分布について、求められた0-5 kmと5-18 kmの2層のCOとHCNのパーシャルカラム量を求め、それらの間の相関を解析した。その結果、春季の5-18 kmのCOとHCNカラム量の間に有意な相関関係が確認された。相関解析から得られたCO/HCN比から、大気中COパーシャルカラムにおけるバイオマス燃焼起源COの割合を求め、3-5月の平均で約70%という値を得た。また、この季節にFTIRで観測された空気塊を、トラジェクトリ―計算ツールであるMETEXを用いて後方粒跡線解析を行った。それらの粒跡線が、人工衛星Terra/Aqua搭載のMODISセンサーによって観測された火災の近傍100 km以内を通過したケースを抽出したところ、春季の高度5-18 kmにおいて、中国東北部からユーラシア大陸の緯度50-60 N帯の地域の林野火災を起源とするCOである可能性が示唆される結果となった。
2010年4月から2019年5月までの期間について、つくばのFTIR観測スペクトルによるCO及びHCNの高度分布を、インバージョン解析プログラムSFIT4を用いて解析した。得られた高度分布について、求められた0-5 kmと5-18 kmの2層のCOとHCNのパーシャルカラム量を求め、それらの間の相関を解析した。その結果、春季の5-18 kmのCOとHCNカラム量の間に有意な相関関係が確認された。相関解析から得られたCO/HCN比から、大気中COパーシャルカラムにおけるバイオマス燃焼起源COの割合を求め、3-5月の平均で約70%という値を得た。また、この季節にFTIRで観測された空気塊を、トラジェクトリ―計算ツールであるMETEXを用いて後方粒跡線解析を行った。それらの粒跡線が、人工衛星Terra/Aqua搭載のMODISセンサーによって観測された火災の近傍100 km以内を通過したケースを抽出したところ、春季の高度5-18 kmにおいて、中国東北部からユーラシア大陸の緯度50-60 N帯の地域の林野火災を起源とするCOである可能性が示唆される結果となった。