日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS05-P05] MOPITTデータによるNICAM-TMモデルのCO濃度の評価研究

*宮島 宏1、齋藤 尚子1、丹羽 洋介2 (1.千葉大学 環境リモートセンシングセンター、2.国立環境研究所)

キーワード:CO、衛星データ、モデル

大気中の一酸化炭素(CO)は炭素化合物の不完全燃焼や炭化水素の酸化によって生成され、バイオマス燃焼はCOの主要なソースである。COの主な消失源は対流圏中での主要な酸化剤であるOHとの反応である。対流圏での寿命は~2か月程度であり地域間や半球スケールで輸送される。

本研究ではNICAM-TM(Nonhydrostatic Icosahedral Atmospheric Model-based Transport Model)により計算されたCOデータと衛星Terra搭載のMOPITT(Measurement of Pollution In the Troposphere)で観測されたCOデータの比較を行った。ここでは、NICAM-TM COのオリジナルデータとMOPITT COのアベレージングカーネル行列(AK)を適用したNICAM-TM COデータの両方をMOPITTデータと比較した。

まず、下部対流圏(850 hPa)においては NICAM-TM COはバイオマス燃焼頻発地域を除く多くの領域でMOPITT COに対して過小評価となっていた。特に、人為起源のCOエミッションが多い中緯度帯 (北緯30°~60°)においてはNICAM-TM COはMOPITT COに対して約30%の過小評価であった。このことからNICAM-TM COシミュレーションの人為起源のCOのエミッションが過小評価である可能性が示唆される。一方、上部対流圏(250 hPa)では全球にわたってNICAM-TM COがMOPITT COに対して過小評価となっていた。特に各半球の春季に低緯度帯から中緯度帯の広範囲でNICAM-TM COはMOPITT COに対して約30%の過小評価となっていた。

さらに、上部対流圏においてはNICAM-TM COの季節変動はMOPITT COの季節変動に比べてかなり小さくなっていた。中緯度帯ではMOPITT COは春季に大きな濃度ピークを取るが、春季にNICAM-TM COとMOPITT COの差も最も大きくなっている。この特徴は、MOPITT COのAKを適用したNICAM-TM COデータにも見られた。MOPITT COデータとの比較から、上空でのNICAM-TM COの過小評価の一因は人為起源のCOエミッションの過小評価および上空への輸送過程にあると推察される。