日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS05-P22] インド上空のメタン高度分布の特徴解析

*張 鼎坤1、齋藤 尚子1、Belikov Dmitry1、Patra Prabir2、Naveen Chandra3 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、2.海洋研究開発機構、3.国立環境研究所)

キーワード:メタン、インド、MIROC4-ACTM

二酸化炭素に次いで重要な温室効果ガスであるメタンはインドの温室効果ガス放出の27%を占めている[Garg et al., 2011]。インドを含む南アジアからのメタン放出は、全球のメタン放出量に大きく寄与している[e.g., Patra et al., 2013]。Chandra et al. [2017]では、GOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)搭載のTANSO(Thermal and Near-infrared Sensor for Carbon Observation)-FTS(Fourier Transform Spectrometer)の短波長赤外(SWIR)バンドのメタンカラム量とAGCM-ACTM(Atmospheric General Circulation Model-based Atmospheric Chemistry-Transport Model)モデルデータを用いて、インド上空のメタンカラム量の季節変動を議論した。本研究では、MIROC4.0-ACTM(MIROC4.0-based ACTM)[Patra et al., 2018]モデルデータとGOSAT/TANSO-FTSの熱赤外(TIR)バンド(「GOSAT-TIR」と呼ぶ)のメタン高度分布データを用いて、先行研究の解析結果との違いを明らかにするとともに、インド上空のメタン高度分布の季節変動の特徴を明らかにすることを目的とする。



まず、Chandra et al. [2017]に倣って、MIROC4-ACTMデータからカラムメタン濃度(XCH4)とσ面で分けた部分カラムメタン濃度(XpCH4)を計算した。ここで、σ= 1.0~0.8をLower Troposphere(LT)、σ= 0.8~0.6をMid-Troposphere 1(MT1)、σ= 0.6~0.4をMid-Troposphere 2(MT2)、σ= 0.4~0.2をUpper Troposphere(UT)、σ= 0.2~0.0をUpper Atmosphere(UA)と定義する。MIROC-4 ACTMでは、湿地と水田のメタン放出スキームとしてCao et al. [1996]とWalter et al. [2001]の二つのスキームがあり、それぞれについてメタン濃度が計算されている [Patra et al., 2018; Ito, 2019; Ito et al., 2019]。



 まず、MIROC4-ACTMのCaoスキームとWHスキームのXCH4、XpCH4を比較したところ、インド上空では夏と秋に両者の差が大きいことがわかった。次に、Arid India(AI)、Eastern Indo-Gangetic Plain (EIGP)、Southern Peninsula (SP)の領域別の比較では、全体にMIROC4-ACTMモデルのCaoスキームの季節変動のXpCH4の季節変動は、先行研究(AGCM-ACTM)よりもGOSAT- TIRのXpCH4の季節変動に近いことがわかった。UA層では、どの領域においてもMIROC4-ACTMのXpCH4はGOSAT-TIRのXpCH4により近い値を示していた。LT層では、どの領域においてもMIROC4-ACTMのXpCH4はGOSAT-TIRおよび先行研究(AGCM-ACTM)よりも大幅に大きくなっていた。MT1層については、AI、SPではMIROC4-ACTMのXpCH4がGOSAT-TIRのよりも先行研究(AGCM-ACTM)のXpCH4に近い値を示していた。EIGPエリアについては、領域内の標高差が大きいために、MIROC4-ACTのXCH4、XpCH4の値のばらつきが他の領域と比べて大きく、有意な結論を導くことが困難であった。