日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 海洋と大気の波動・渦・循環の力学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:田中 祐希(福井県立大学 海洋生物資源学部)、青木 邦弘(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)

17:15 〜 18:30

[ACG38-P01] 海洋植物プランクトンの多様性に関する統計力学的解釈

*青木 邦弘1、増田 良帆2 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.北海道大学地球環境科学研究院)

キーワード:生物多様性、統計力学、海洋生態系、海洋循環、最大エントロピー法

海洋では、競争排除の原理に反して、共通の資源を利用する複数種の植物プランクトンが共存しており、なぜ共存が可能なのかという事が長らく問題となってきた(Hutchinson, 1961)。成長速度の温度・光強度・栄養塩濃度への依存性(成長特性)の似通った多数種の植物プランクトンを導入した海洋生態系モデルの数値実験によれば、海洋循環が引き起こす植物プランクトンの分散は局所的な共存種数・多様性(α多様性)を増加させる(Masuda et al., 2020)。一方、分散は、種の絶滅にも寄与し、広域での共存種数・多様性(γ多様性)を減少させる(Lévy et al., 2014)。本研究では、平衡統計力学に基づいた理論的枠組みを構築することで、植物プランクトンの共存種数・α多様性・γ多様性が決まるメカニズムを理解することを目指す。基本描像を得るため、本研究ではまず、種固有の成長特性が環境要因によらず、循環場による分散等の他の環境要因も無い場合について検討した。この場合、成長資源である栄養塩をそれぞれの種にどの程度配分するかという、個体数を配分値とみなした分配問題となる。統計力学的推定法である最大エントロピー法に基づいて最適解を求めると、それぞれ成長特性に応じた個体数が得られる。このことは、限られた資源下においても複数種の局所的共存が可能であることを意味する。発表時には、成長特性の空間依存性、循環場に伴う分散効果を考慮した場合の結果についても紹介したい。