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[G01-05] 「Society 5.0」時代「SDGs」に向けた防災リテラシー拡張の必要性
キーワード:阪神・淡路大震災、東日本大震災、ソフト防災、ハザードマップ、福島原発、蓋然性
日本でいちばん採択率が高い中学校教科書(東京書籍版)に1981年から六甲・生駒の地質断面図が掲載され,地震と地殻変動の典型例として紹介されていた。1970年代には神戸市は大阪市大の研究者らのグループに活断層調査を依頼,その成果は「神戸に直下地震の恐れあり」として地元紙の1面をかざった。1990年代には,地域防災計画策定にあたり,震度6か震度5かいずれを想定するかの議論を経て,耐震防火水槽不要の震度5の強が選ばれた。阪神・淡路大震災は,蓋然性の高い知識があってもいかされずに震災を招いてしまう典型例である。
貞観,慶長の巨大歴史津波の経験がありながら,それを対策にとりいれられなかったために石巻平野,仙台平野から福島県沿岸部を無防備に放置した結果,東日本大震災の津波被災が拡大した。内閣府(防災担当)ほかによる「津波・高潮ハザードマップ作成マニュアル」(2004)では,ハードによる津波襲来防止ができずとも,避難によって命を守るソフト防災のために幅広い浸水域を示す原則ができていたのだが,福島原発を浸水域にするような浸水被害は可能性の明示すらされなかった。その背景には電力会社側からの政治的圧力があったと考えられる(地震調査研究推進本部地震調査委員会委員, 同長期評価部会部会長と原子力規制委員会委員長代理を経験した島崎邦彦:『科学』連載「葬られた津波対策をたどって」に経緯がまとめられている)。
「誰一人取り残さない」とのSDGs目標がかかげられ,その実現を図る「Society 5.0」においては,イノベーションは産業技術発展にとどまらず,市民社会の連携によって公共の課題の解決へと概念を広げているといえる。阪神・淡路大震災,東日本大震災のような,「想定外(し)」をもたらさない社会のしくみづくりもまた,防災教育のためのリテラシーの柱の一つとして確立していきたい。そのために必要な公教育や民主主義のあり方を検討する。
これまでに報告した以下ほかの資料に新たな情報を加えた考察となる。
林 衛(2019):なぜ宮城県は二度の巨大歴史津波(869貞観,1611慶長)を対策から外してしまったのか—情報開示された2010年夏「第4次地震被害想定調査」打合せ記録簿から浮かび上がる被害拡大要因
http://hdl.handle.net/10110/00019753
日本災害復興学会2019年度鳥取大会, 日程:2019年11月9日(土)~10日(日), 会場:鳥取大学鳥取キャンパス
貞観,慶長の巨大歴史津波の経験がありながら,それを対策にとりいれられなかったために石巻平野,仙台平野から福島県沿岸部を無防備に放置した結果,東日本大震災の津波被災が拡大した。内閣府(防災担当)ほかによる「津波・高潮ハザードマップ作成マニュアル」(2004)では,ハードによる津波襲来防止ができずとも,避難によって命を守るソフト防災のために幅広い浸水域を示す原則ができていたのだが,福島原発を浸水域にするような浸水被害は可能性の明示すらされなかった。その背景には電力会社側からの政治的圧力があったと考えられる(地震調査研究推進本部地震調査委員会委員, 同長期評価部会部会長と原子力規制委員会委員長代理を経験した島崎邦彦:『科学』連載「葬られた津波対策をたどって」に経緯がまとめられている)。
「誰一人取り残さない」とのSDGs目標がかかげられ,その実現を図る「Society 5.0」においては,イノベーションは産業技術発展にとどまらず,市民社会の連携によって公共の課題の解決へと概念を広げているといえる。阪神・淡路大震災,東日本大震災のような,「想定外(し)」をもたらさない社会のしくみづくりもまた,防災教育のためのリテラシーの柱の一つとして確立していきたい。そのために必要な公教育や民主主義のあり方を検討する。
これまでに報告した以下ほかの資料に新たな情報を加えた考察となる。
林 衛(2019):なぜ宮城県は二度の巨大歴史津波(869貞観,1611慶長)を対策から外してしまったのか—情報開示された2010年夏「第4次地震被害想定調査」打合せ記録簿から浮かび上がる被害拡大要因
http://hdl.handle.net/10110/00019753
日本災害復興学会2019年度鳥取大会, 日程:2019年11月9日(土)~10日(日), 会場:鳥取大学鳥取キャンパス