日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

15:00 〜 15:15

[G03-06] 日本の7つの大学での地学・地理系の教育経験から学んだこと
−今後の理想的な地学・地理教育のあり方−

*宋 苑瑞1 (1.早稲田大学)

キーワード:地球系教育、地理教育、オンライン教育、大学、コロナ

新型コロナウイルスの世界的拡散に伴い日本国内の大学でも本格的なオンライン授業を余儀なくされた。教わる側も教える側も新しいシステムに慣れるまで大変な時間を過ごした。私はコロナ禍に7つの大学で地学・地理系の科目を教えた。所属大学や担当科目が異なっても、学生の好みや悩みには共通点が多かった。本稿では複数の大学での地学・地理系科目の教育経験から学んだことを共有する。

(1)地学・地理系の教育においてもオンライン教育は非常に効果的な方法である。特にオンデマンド授業の場合は時間に関係なく受講できること、すでに熟知している部分は倍速でも受講できること、聞き取れなかったところを巻き戻して聞くことが可能である。
(2)地学・地理系のオンライン教育では、Google マップなどがとても重要なツールである。一部の科目では受講生を小グループに分けて、Google Earthを使い面白い地形を探し、その成り立ちを調べる作業をさせた。従来の対面式の大人数授業でも似たような作業を試したことがあったが、その時よりもはるかに効率的だった。
(3)オンライン授業は、オンデマンドとライブ授業のブレンド型が最も効果的である。オンデマンド授業をメインにしつつ、1回程度のライブ授業を入れた。そのライブ授業に学生同士のグループワークを含めると教育効果も高くなり、受講生の満足度も高かった。特に、1年生の多い授業ではこのようにお互い交流のできる場を授業の最初の段階で作ることが重要である。
(4)学生のウェブカメラをオンにしてもらうことも効果的である。通信環境や受講環境を配慮して学生のウェブカメラをオフにするようにしている授業が多いが、ライブ授業で学生のカメラをオンにして参加させた。中には拒否感を持つ学生もいるが、学生の感想では、名前しか知らなかった同期の顔を初めてみて親近感が湧いたり、大学生であることが実感できたなど、ポジティブに答えた学生が圧倒的に多かった。
(5)学生のモチベーションを上げることと大学の意味を理解させることは大事である。今の状況は彼らが期待していたものとは異なるため、やる気を失ったり、落ち込む場合もある。私は全ての授業の初回でこの授業のためいくらを払っているのか計算させている。大学で何を学ぶべきか、何をするべきかを動画に含めることも、学生のやる気を引き上げることに役立った。

オンライン授業では、学生の集中が切れないような工夫が多く必要である。いくら専門知識の多い難しい内容であっても、学生に興味を持たせられるかどうかは、教え方次第である。履修申請をして受講している以上、その科目に全く興味がないことはない。オンライン講義は今後も一部でも続けるべきであるが、その分学生の孤立感を解消する工夫と集中を妨げる要素は改善すべきである。