日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 原子力と地球惑星科学

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)

17:15 〜 18:30

[HCG23-P01] 第四紀火山を対象としたGISを用いた地形解析による放射状岩脈のモデル化の検討

日浦 祐樹1、*川村 淳1、梅田 浩司2、丹羽 正和1 (1.日本原子力研究開発機構、2.弘前大学)

キーワード:第四紀火山、火道、岩脈、地形解析、GIS

【背景・目的】わが国の高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を円滑に進めていくためには、地層処分の技術的信頼性を更に高め、国民の理解と信頼を得ていくと同時に、処分事業や安全規制の基盤となる技術を整備・強化していくための研究開発を着実に行っていく必要がある。日本原子力研究開発機構では、「地層処分研究開発に関する全体計画(平成30年度~平成34年度)」において整理された研究課題のうち、地層処分に適した地質環境の選定に係る自然現象(火山・火成活動、深部流体、地震・断層活動、隆起・侵食など)の影響把握及びモデル化に関連する研究課題に対して、地質学、地形学、地震学、地球年代学といった各学術分野における最新の研究を踏まえた技術の適用による事例研究を通じて、課題の解決に必要な知見の蓄積や調査・評価技術の高度化を総合的に進めている。

火山・火成活動に関する技術的課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。この課題に対しては、特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km以上に及ぶ場合の調査事例を蓄積していくことが重要であるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため本検討では、数値標高モデルなどの地形データなどに基づいて第四紀火山体下に分布する岩脈の分布範囲を推定する手法開発を目的とした。

【実施内容】火山体の内部には、ほぼ垂直に伸びて山頂火口に繋がる中心火道とそこから派生する放射状岩脈が存在する。放射状岩脈の広がりは周辺の地殻応力場に影響され、最大水平圧縮応力軸の方向に岩脈が密に発達する傾向がある。また、岩脈と火山体の斜面が交差する地点には側火口が形成される。そのため、側火口の分布範囲から放射状岩脈の広がりを推定した場合は、分布範囲を過小に見積る可能性が高い。一方、山体の裾野(基盤との境界;以下、火山体の底面)の広がりは、実際の岩脈の分布範囲を反映していると考えられる(例えば;Nakamura, 1977)。

そこで本研究では、Nakamura (1977)の考え方を援用し、成層火山、カルデラなど火山の様式に応じた6つの火山を対象に、現時点において最新の数値地図とGISソフトウェアを用いて代表的な第四紀火山の火山体底面の形状、面積、重心などの地形パラメータを計測し、標高ごとの各パラメータから放射状岩脈の三次元的な分布範囲のモデル化を検討し、GISを用いた作業手順のマニュアル化を図った。

【結果】標高毎の重心位置の変遷は、火山体が形成される過程での活動の中心(火道)の変遷をある程度示唆しており、中央火口のみならず側火山などの活動も抽出可能であることがわかった。このことは、活動履歴が詳らかになっていない火山でも火道の変遷や安定性について、本手法を適用することによりある程度定量的な評価の可能性を示唆しするものと考えられる。

一方、標高毎の面積の変化については、標高を縦軸、面積を横軸にしたグラフ上では、いずれも上に凸の形状を呈し、ある標高で変曲点があり面積-標高のトレンドが変化する傾向があり、このことは以下の二つの可能性を示唆すると考えられる。

①Nakamura(1977)による山体内の火道からの放射状岩脈のイメージ図を想定すると、変曲点よりも低い標高の重心位置群と高い標高の重心位置群は、放射状岩脈の分布高さを示唆しているのかもしれない。

②昭和新山の山体形成イメージを適用すると、新旧の活動中心を示唆してるのかもしれない。そのような観点で標高-重心位置平面を見ると、低標高と高標高の重心位置はまとまりやトレンドが異なるように見える。

今後は、本手法の適用事例を増やし適用可能性について評価し、作業手順のマニュアル化を図る。

引用文献:Nakamura, K. (1977): Volcanoes as Possible Indicators of Stress Orientation – Principle and Proposal, Jpurnal of Volcanology and Geothermal Research, vol.2, pp.1-16.

謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部を利用した。