日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG29] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システムおよびその応用

2021年6月6日(日) 09:00 〜 10:30 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:篠原 正典(帝京科学大学)、加藤 浩(三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター 植物機能ゲノミクス部門)、木村 駿太(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 / 宇宙探査イノベーションハブ(併任))、オン 碧(筑波大学)、座長:オン 碧(筑波大学)、加藤 浩(三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター 植物機能ゲノミクス部門)、篠原 正典(帝京科学大学)

09:05 〜 09:20

[HCG29-02] 閉鎖居住実験の最新動向

*篠原 正典1、嶋宮 民安2 (1.帝京科学大学、2.有人宇宙システム株式会社)

キーワード:生命維持システム

有人での宇宙探査・開発のように地球生存圏外環境で人が長期で暮らす場合、「環境制御を伴った生命維持システム(ECLSS)」の開発は必要不可欠である。現在、ISSにおいて最大6名の宇宙飛行士による圏外での生活・活動が恒常的に続けられており、物理化学的処理によるECLSSシステムは完成し成功を収めているが、食料(水を除く)を中心に物資の地球への依存はほぼ100%の状態である。圏外のより遠方より長期間の探査・開発を目指す場合、地球への依存度を減らすため、水・酸素の再生率および食料自給率のさらなる向上が求められ、食料自給のために植物も系の中に組み込んだECLSSであるbioregenerative life support systems(以降、BLSS)が期待される。

ここ数年、火星探査などを想定し、6名の多国籍のクルーによる地上模擬実験が期間(ロシア・Mars500、520日という長期の滞在)や環境(米国・HI-SEAS、ハワイ・マウナロア山頂という火星に類比可能な環境)を模して行われ、成功裏に終わり注目されたが、食料の全てが外部供給であるなどBLSS実験という点では得るものの乏しい実験であった。

この分野でこれまで画期的な試みとされてきたのは、米国アリゾナで民間主導で行われたBiosphere 2プロジェクト(8名、2年間)、NASA・JSCで様々な条件で行われた月・火星生命維持実験プロジェクト(Lunar-Mars Life Support Test Project、4名、3か月など)、および日本・六ヶ所村・(財)環境科学技術研究所によって行われたミニ地球プロジェクト(2名、最長1ヶ月)であるが、いずれも約20~10年前の試みであり、現在はBLSS実験施設としての実験はなされていない。

本報告では、これら過去の実験の成果の整理に加えて、Beihang University(北京航空航天大学)のLunar palace 1を用いて研究開発が続けられているLunar Palace 365(4名(入れ替えでのべ8名)、370日)のような現在進行形のプロジェクトの成果報告を交えて紹介し、今後、どのような目的のもと、どのようなBLSS実験が期待されるのかを、セッション演者および聴衆の皆様と検討したい。