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[HGM03-P03] セン川下流域の川幅と河床材料の粒度分布特性について
キーワード:川幅、土砂輸送、土砂の分級、トンレサップ湖、カンボジア
セン川はカンボジア中央部においてトンレサップ湖の東端に注ぐ河川で、モンスーン性の降雨の影響を受け、雨季になると水位・流量が増加する。また、トンレサップ湖の水位は雨季に増加し、面積は乾季の3~5倍に拡大するため、セン川下流域ではトンレサップ湖から60 km地点付近までの範囲が毎年水没する。セン川下流域において乾季の水際にみられる河床材料の粒径は、トンレサップ湖から180 km地点付近ではD50で約400 µm 、80 km地点付近で約350 µm 、40 km地点付近では約250 µm となり、下流に向かって細粒化する。このような縦断分級には、湖水位とセン川流量の変化の双方が影響を及ぼしているものと推察される。一方、川幅は、乾季のトンレサップ湖の湖岸から70 km地点付近まで(区間1)は概ね100~150 m程で推移するが、70 km地点から60 km地点まで(区間2)では急減し、60 km地点で70 m程となる。また、60 km地点からトンレサップ湖まで(区間3)は緩やかに減少し、湖岸で50 m程度となる。レジーム論的にみると川幅と流量は密接に関係していると考えられ、区間1ではセン川の雨季の最大流量に概ね対応した川幅が形成されているとみられる。これとは異なり、区間2では雨季の氾濫に伴うセン川の流量の減少と、雨季の終わりから乾季の初め頃のセン川の流量減少および湖水位低下の影響を受けることにより、川幅が急減しているものと考えられる。また、区間3は雨季に水没して流路の流水・流砂の輸送がなくなり、水が低下して流路の流水・流砂機能が回復する時候、すなわち雨季の終わりから乾季の初め頃の流量を反映した、狭い川幅になっていると推察される。このように、セン川下流域では湖水位と河川流量の周期的な変化によって土砂輸送能力が変化して河床材料の縦断分級をもたらし、川幅をはじめとする河川地形を形づくっている。このような変化は、同時にセン川周辺の土地利用にも影響を及ぼしていると考えられる。