日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI35] 計算科学が拓く宇宙の構造形成・進化から惑星表層環境変動まで

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.19

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、井田 茂(東京工業大学地球生命研究所)

17:15 〜 18:30

[MGI35-P07] 局所細密化を適用したRBF移流モデルの安定性解析

*小笠原 宏司1、榎本 剛2 (1.京都大学 理学研究科、2.京都大学 防災研究所)

キーワード:地球流体力学、移流スキーム

動径基底函数(Radial Basis Function, RBF)は節点からの距離のみに依存する函数である。RBFは座標系に依存しないため,幾何学的な構造を持たない球面上の準一様な節点に対して適用可能であり,微分演算子が極において特異とならない。また,実装が簡単で高次元でも複雑にならない。このようなRBFの特長を活かして,Flyer and Wright (2007)は球面上の移流モデルを構築し,節点数とともに誤差が指数函数的(スペクトル的)に収束することを示した。

 局所細密化は,渦のような局所的に変化が大きい領域において,効率的かつ精度よく計算するために用いられる。Flyer and Lehto (2010)は,球面上の渦の巻き上げ実験(Nair et al. 1999)を行い,準一様節点と比較して精度が改善できることを示した。渦での解像度が向上したことに加えて,RBFで用いられる内挿行列の条件数が局所細密化により減少したことが精度の向上に寄与したものと考えられる。

 小笠原・榎本(2020)は,Schmidt変換を改変して局所細密化を行った。Schmidt変換は反復計算が不要であるため,収束が保証されない電荷を用いた既存の手法よりも,多数の節点数において有利である。また,Runge現象抑制のために用いるRBFの形状パラメタのスケーリングに緯度のみに依存するマップファクタ(Courtier and Geleyn 1988)を節点間隔に代えて利用することが可能となった。しかしながら,小笠原・榎本(2020)は短時間積分における誤差が局所細密化により準一様節点よりも改善したことのみが報告されており,安定性解析が行われておらず,長時間積分における安定性は明らかではない。そこで本研究では渦巻き上げ実験における安定性解析を行う。

 固有値を用いた安定性解析を行ったところ,局所細密化すると準一様節点と比較して,時間積分に用いた4次のルンゲ・クッタ法の安定領域の外にある固有値の数と固有モードの最大増幅率が減少するため,安定性が向上することが分かった。安定性解析の結果を検証するために,長時間積分を行ったところ,準一様節点では不安定が生じ,局所細密化すると積分時間を通じて安定していることが確認できた。



Referencesh



Flyer, N. and E. Lehto, 2010: Rotational transport on a sphere: Local node refinement with radial basis functions. J. Comput. Phys. 229, 1954–1969.

Schmidt, F., B., 1977: Variable fine mesh in spectral global models, Phys. Atmos., 50, 211–217.

Flyer, N., and G. B. Wright, 2007: Transport schemes on a sphere using radial basis functions. J. Comput. Phys., 226, 1059–1084.

Courtier, P., and J.-F. Geleyn, 1988: A global numerical weather prediction model with variable resolution: Application to the shallow-water equations. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 114, 1321–1346.

Nair, R., J. Côté, and A. Staniforth, 1999: Cascade interpolation for semi-Lagrangian advection over the sphere. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 125.

小笠原宏司, 榎本剛, 2020: 局所細密化節点による低気圧を模した渦の再現性. 京都大学防災研究所年報, 63B,205–208.