[M-IS15] 津波堆積物：東北地方太平洋沖地震後10年の成果と今後の展望

[MIS15-05] パラメータ不確実性に対する津波土砂移動数値計算の応答の分析

*増田 英敏¹、菅原 大助²、吉河 秀郎³、櫻井 英行³、今村 文彦² (1.東北大学理学部地圏環境科学科、2.東北大学災害科学国際研究所、3.清水建設株式会社技術研究所)

キーワード：東北沖津波、仙台湾、土砂移動、数値解析

津波土砂移動の数値解析は，津波による堆積作用を理解・予測する上で強力なツールであり，2011年東北沖津波で得られたデータをベンチマークとして妥当性確認と再現性向上が進められてきた（Sugawara et al., 2014）．津波土砂移動数値解析は入力データやモデルパラメータ等に由来する不確実性を有するが，その影響を系統的・網羅的に検討した例はほとんどない．本研究では，津波土砂移動数値解析の不確実性を系統的に評価する手法を検討するため，2011年東北沖津波によって大規模な土砂移動が生じた宮城県山元海岸（仙台湾南部）を例に，数値モデルTUNAMI-STMを用いた感度分析を実施した．

対象としたパラメータは，堆積物の粒径や沈降速度，流砂量式の係数など10個である．粒径については沈降速度など他のパラメータとの組み合わせも検討した．津波前後の海底地形変化の実測データ（有働ほか，2013）が得られている範囲のうち，笠野〜磯浜海岸の領域を海岸線方向に約1 kmで岸―沖方向に約3.5 kmの6つのセグメントに分割し，それぞれについて海域・陸域での侵食・堆積量の変化率を算出した．なお，現地観測された津波による侵食・堆積の規模はセグメントにより異なる．

約30ケースの解析で特に感度の大きかったパラメータは粒径とマニングの粗度係数で，計算結果の変化率がパラメータの変化率を上回った．また，セグメントごとに変化率の大きさに違いが確認された．粒径に着目して詳細な検討を行った結果，陸域堆積量・海域侵食量の変動と堤防（固定床）の面積率および高さの間に有意な相関が見られた．さらに，セグメントを沿岸方向に3分割した分析では，比較範囲の大きさによって感度が変化することも明らかになった．これらの結果は，堤防のモデル化方法によってはパラメータの不確実性による計算結果の揺らぎが増大する可能性や，計算結果とデータを比較する際の空間的スケールによって不確実性の影響の大きさが変化する可能性があることを示唆している．