日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS27] 歴史学×地球惑星科学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.22

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(国文学研究資料館)

17:15 〜 18:30

[MIS27-P01] 歴史地震史料のGISデータ化の試みと課題

*大邑 潤三1,4、濱野 未来2、橋本 雄太3、加納 靖之1,4 (1.東京大学地震研究所、2.立命館大学大学院文学研究科、3.国立歴史民俗博物館 、4.東京大学地震火山史料連携研究機構)

キーワード:歴史地震、GIS、歴史的地名

歴史地震に関する史料については,明治期から収集が行われ,史料集が刊行されてきた.現在,これらの史料集の電子テキスト化が進められており,今後,地名へ位置情報を付与する計画もある.

地震史料のGISデータ化については,大邑(2015)がその利点を述べている.地震現象の分析には空間的な解析が不可欠である.しかし史料中の地点の特定作業は時間を要する上に,歴史学的な知識が必要になる.こうした点は,分野外の研究者の参入を阻んでいる1つの要因である.

現在,多くのGISデータが国土交通省などによって公開されている.地震史料もGISデータ化されて公開されれば,他のGISデータとの重ね合わせが容易になり,様々な分析が可能になる.さらに地震学だけでなく様々な関連分野で活用できるようになる.

本研究では,既に電子テキストが公開されている1596年に畿内で発生した地震(慶長伏見地震)に関して,史料のGISデータ化を試みた.GISを用いて本地震の起震断層と史料の分布の関係を検証した結果,史料が京都や奈良に偏在しており,史料のみでは正確な震央を推定できない可能性が高いことを明らかにした.歴史地震を分析する際には史料の空間的偏りを考慮し限界を知ることが必要である.一方,史料の性格の違いによって記録の分布の傾向が異なる事が明らかになった.史料をGISデータ化することで,空間的な視点で史料の吟味を行う事が可能になる.今後,作成したGISデータはCSV形式やGeoJSON形式にして,オープンデータとしてウェブ上で公開していく予定である.

史料中の地点をGISデータ化する作業においては,異なる空間レベルや多様な性格を持つ地名が史料中に混在している事が問題となった.具体的な問題点は次の通りである.
1. 都市部では細かいレベルの地名が多いため大縮尺の旧版地形図などが参考にならない
2. 同じ地名でも異なる表記がなされる例が多い(表記ゆれ)
3. 現代では消失している地名が存在する
4. 寺社や建物は当時の位置を確認する必要がある
5. 史料の前後を読まないと位置を特定できない場合がある
6. 概念的で漠然とした地名が存在する
7. 点(ポイント)で表現できない線(ライン)や面(ポリゴン)の地名が存在する
8. ある地点からの距離などで位置を表現する場合が存在する