日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT43] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.20

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、新井 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター)

17:15 〜 18:30

[MTT43-P03] 電離圏擾乱から見る2020年8月4日ベイルート爆発に伴うインフラサウンドの伝搬

*松下 愛1、Bhaskar Kundu2、Batakrushna Senapati2、日置 幸介1 (1.北海道大学大学院理学院、2.国立工科大学ルールケラ校)

大気圏で発生した現象による電離圏の電子数(Total Electron Content, TEC)の変化はこれまでGNSS (Global Navigation Satellite System)を用いたGNSS-TEC法によってしばしば観測されてきた。例えば比較的大きな隕石がもたらす火球が地上付近の大気圏で爆発すると、音波や内部重力波が大気を伝わってTECが変化する。2013年2月15日にチェリャビンスクに出現した、観測史上最大といわれる火球でも、複数のGPS衛星と地上受信機を結ぶ視線でTECに顕著な擾乱信号が確認されている(e.g. Ding et al., 2016) 。

本研究では2020年8月4日にレバノンのベイルートにある港湾施設内部で起こった化学爆発を対象に、GNSS-TEC観測を行った。この爆発の規模はTNT 火薬に換算して1-1.5 kt であり、前述した火球の100分の1程度である。しかしGNSS連続観測局が南側に比較的豊富にあるため、複数の観測データにN字型のTEC変化が観測された。擾乱の信号は爆発地点から南側の、少し離れた局で観測された。南側で信号が顕著だったのは、磁場によって電子が動く向きが制限されるためと考えられる。

現在、爆発による擾乱の伝搬に関する数値シミュレーションも行っている。N字型の音波を仮定し、大気中の音速構造と電子密度の高度依存性、磁場の影響を加味して数値計算を行った。結果として、観測波形とよく合うN字型のTEC変化が再現できた。今後はこの数値シミュレーションの問題点を改善していく予定である。問題点としては、(1)視線が爆発の直上近くを通る場合に波形が再現できないこと、(2)東西方向の考慮が十分でないこと、(3)最適な周期を客観的な方法で決める必要があること、が挙げられる。