13:45 〜 15:15
[O07-P64] 月のクレーター探査ローバーの製作
キーワード:走行試験、アルドゥイーノ、模擬走行路
月のクレーターには天体の衝突で形成された急斜面や断崖、斜面が崩れたことによる堆積物が存在している。クレーターを調査するにはこれらを走破する必要があるが、現在のローバーでは比較的平らな所しか走ることができず、水があると考えられているクレーターの内部を調査することはできない。そのため急斜面や断崖を移動できるローバーの開発が必要となっている。そこで、本研究では月のクレーター斜面を安定して走行することができるローバーを開発し、斜面を安定して走行する事が出来るか検証を行うという目的で研究を行った。
ローバーの本体は工作模型用のパーツを組み合わせて作り、車輪とロープを巻くリールは発泡スチロールと工作用紙を用いて製作した。また、ローバーには電源やモーターの制御回路を搭載した。車輪は2輪になっており、モーターで回す。さらに、地球で山を登るときに使われるようなロープを使って車体を支えられれば安定して斜面を下ることが出来ると考え、斜面を下るためにロープを使う機構を搭載した(図1)。その機構は、車輪に取り付けたリールとそこに巻き付けたロープから構成されている。ロープの先は斜面の上に固定し、車輪とリールが同時に回転することで、移動しながらロープが伸びる。この動作によって、ロープが走行中の支えとなるため斜面での横転防止や走行速度を一定に保つことが可能となると考えた。
次に月のクレーターを模したコースで走行実験を行った。コースには月のクレーターと似せるために、表面の様子、重力、坂の角度の3つの条件を設定した。実験ではこれらの条件を変えて実験を行った。走行性能の評価は、2つの基準を設けて安定した走行が出来ているかを判断した。1つ目の基準は機体が破損することなくまっすぐに走行していることで、カメラで記録した動画から判断した。2つ目の基準は一定の速度で走行していることとした。距離センサーを使い、場所ごとの速度を求め、得られたデータを散布図にまとめた。そして、一定の速度で走っていることを判断するために5.262 m/sを速度の基準値として、この値を越える値はないかどうかで判断を行った。速度の基準をこの値にしたのは、仮に5.262 m/s以上の速度で斜面を走行した時にローバーが破損する危険が出てくることから、この値に設定した。
これらの基準をもとに、3種類の走行実験を行い、性能を試験した。斜面の角度30度、重力1G、障害物なしの条件で走行させた実験1(図2)では、ローバーは2つの基準をともに満たして走行した。コースの条件の表面の様子を変え、表面に2cmと4cmの障害物をそれぞれ設置してローバーを走行させた実験2(図3)では、どちらの高さの場合も2つの基準を満たして走行することができた。実験3では重力の条件を0.5Gと0.16Gの2つに変えて実験を行い(図4)、1つ目の基準については、重力を0.5Gと0.16Gに変えたどちらの実験でも基準を満たしていた。一方、2つ目の基準について、0.16Gの条件下ではローバーの速度を基準値以内に保って走行したが、0.5Gの実験ではローバーの速度が基準値よりも速い速度で走行した。ただし、この速度は、ローバーが斜面を下りはじめる前の平坦斜面での速度であり、斜面を下っている際はローバーの速度は基準値以内であった。
これらの結果から、今回製作したローバーは、全ての実験で設定した基準を満たして走行していたと言える。したがって、今回製作したローバーは、地球とは異なる月に似せた条件での走行には支障がないと考えられ、実際に月のクレーター斜面を走行できる可能性がある。なお、今回製作したローバーは、ロープの長さの範囲内しか移動できないという制限がある。また、今回は直線のコースのみでの性能試験しか行っていないため、左右方向への移動の検証が行えていないことが課題として残っている。この2つの課題の解決のためにローバーのさらなる改良と実験を行っていきたい。
ローバーの本体は工作模型用のパーツを組み合わせて作り、車輪とロープを巻くリールは発泡スチロールと工作用紙を用いて製作した。また、ローバーには電源やモーターの制御回路を搭載した。車輪は2輪になっており、モーターで回す。さらに、地球で山を登るときに使われるようなロープを使って車体を支えられれば安定して斜面を下ることが出来ると考え、斜面を下るためにロープを使う機構を搭載した(図1)。その機構は、車輪に取り付けたリールとそこに巻き付けたロープから構成されている。ロープの先は斜面の上に固定し、車輪とリールが同時に回転することで、移動しながらロープが伸びる。この動作によって、ロープが走行中の支えとなるため斜面での横転防止や走行速度を一定に保つことが可能となると考えた。
次に月のクレーターを模したコースで走行実験を行った。コースには月のクレーターと似せるために、表面の様子、重力、坂の角度の3つの条件を設定した。実験ではこれらの条件を変えて実験を行った。走行性能の評価は、2つの基準を設けて安定した走行が出来ているかを判断した。1つ目の基準は機体が破損することなくまっすぐに走行していることで、カメラで記録した動画から判断した。2つ目の基準は一定の速度で走行していることとした。距離センサーを使い、場所ごとの速度を求め、得られたデータを散布図にまとめた。そして、一定の速度で走っていることを判断するために5.262 m/sを速度の基準値として、この値を越える値はないかどうかで判断を行った。速度の基準をこの値にしたのは、仮に5.262 m/s以上の速度で斜面を走行した時にローバーが破損する危険が出てくることから、この値に設定した。
これらの基準をもとに、3種類の走行実験を行い、性能を試験した。斜面の角度30度、重力1G、障害物なしの条件で走行させた実験1(図2)では、ローバーは2つの基準をともに満たして走行した。コースの条件の表面の様子を変え、表面に2cmと4cmの障害物をそれぞれ設置してローバーを走行させた実験2(図3)では、どちらの高さの場合も2つの基準を満たして走行することができた。実験3では重力の条件を0.5Gと0.16Gの2つに変えて実験を行い(図4)、1つ目の基準については、重力を0.5Gと0.16Gに変えたどちらの実験でも基準を満たしていた。一方、2つ目の基準について、0.16Gの条件下ではローバーの速度を基準値以内に保って走行したが、0.5Gの実験ではローバーの速度が基準値よりも速い速度で走行した。ただし、この速度は、ローバーが斜面を下りはじめる前の平坦斜面での速度であり、斜面を下っている際はローバーの速度は基準値以内であった。
これらの結果から、今回製作したローバーは、全ての実験で設定した基準を満たして走行していたと言える。したがって、今回製作したローバーは、地球とは異なる月に似せた条件での走行には支障がないと考えられ、実際に月のクレーター斜面を走行できる可能性がある。なお、今回製作したローバーは、ロープの長さの範囲内しか移動できないという制限がある。また、今回は直線のコースのみでの性能試験しか行っていないため、左右方向への移動の検証が行えていないことが課題として残っている。この2つの課題の解決のためにローバーのさらなる改良と実験を行っていきたい。