日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P75] Cosmic Watchを用いた中性子宇宙線観測のデータに基づいた雪量計の作成

*生嶋 慶1、河野 理佳子2、田中 香津生2、秋田 悠児1 (1.広尾学園高等学校、2.東北大学)

キーワード:宇宙線、中性子、Arduino、雪量計

火山活動を観測する一つの手法として重力の変化を測定する手法が存在するが、重力測定機器の上に冬になると雪が降り積もり雪の重力によって測定に影響を及ぼす。これを修正するため、積雪量を測定しデータを修正する必要がある。この積雪量を測定する方法として宇宙線を用いる手法が注目されている。この手法は雪の下に宇宙線検出器を設置し、宇宙線のエネルギーの減衰から積雪量を計算する。本研究では安価かつ小型な宇宙線検出器Cosmic Watchを用いてこの手法を行いコストダウンと小型化を目指した。宇宙線検出器は主にシンチレータと光電子増倍管の2つで成り立つ。シンチレータは宇宙線が貫通した際にわずかに発光し、この光を光電子増倍管を用いて電気信号として計測し記録する。この時得られる電気信号の電圧値は宇宙線のエネルギーと比例する。また本研究では宇宙線検出器を2つ上下に重ね、2つの宇宙線検出器が同時に検出したデータのみを記録する、コインシデンス計測を用いて宇宙線検出を行った。コインシデンス計測により宇宙線以外のノイズデータを大幅に削減することができる。
中性子宇宙線は雪を通過するとその積雪量に比例して宇宙線のエネルギーが減衰し、そのため宇宙線のエネルギーを計測することで積雪量を計算することができる。しかしこの時Cosmic Watchは中性子の他にも多くの宇宙線を観測することができるため、雪量計に必要な中性子のデータのみを収集する必要がある。そのためにはPulse Shape Discrimination(PSD)を行う必要がある。PSDは光電子増倍管から得られる電気信号の波形データの電圧の減衰の仕方を積分を用いて求めることで宇宙線の種類を判別する宇宙線の解析手法である。これはシンチレータの特性によって宇宙線の種類それぞれで電気信号の減衰の仕方に違いが生じることを利用している。中性子のPSDが容易なEJ276というシンチレータをCosmic Watchに搭載し中性子宇宙線のデータを収集した。通常Cosmic Watchは電気信号から電圧を一回のみ取得するが、これではPSDをするために必要な電気信号の波形データが得られない。そのため波形の概形を得るため電圧の取得を何回にも渡って連続的に行った。また機械学習を用いて実際の波形データを学習させ、概形から波形を予想する試みも行った。PSDを行い中性子のデータを得られるようになったため今後は実際に雪や水槽などを用いて積雪量や水量を中性子宇宙線から正しく計算できるかどうかの実験を行いたいと考えている。