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[PCG17-13] 熱雑音観測機開発のための強磁場、弱磁場下における熱雑音スペクトルの評価
キーワード:熱雑音、熱雑音観測機
宇宙プラズマ中の衛星観測による測定パラメータとして、電子の温度や密度は、宇宙の電磁環境を理解する上で重要である。科学衛星に搭載された電子検出器は電子を直接検出し、検出された電子の速度ベクトルを測定する。観測データは、位相空間密度の導出に利用することができる。しかし、冷たい電子の温度や密度を求めるには衛星の帯電の影響のためとても困難である。一方、プラズマ波の観測は、低温成分を含むプラズマ密度や電子温度を測定するための有効な手段である。電子の運動によって、電界センサに電流のゆらぎを生じる。このゆらぎは、いわゆる熱雑音と呼ばれるものである。熱雑音は、プラズマ周波数またはUpper Hybrid Resonance frequencies(UHR)の周辺で周波数スペクトルに特徴的な構造を示す。 このスペクトル構造は電子の運動を反映しているため、熱雑音の理論モデルにスペクトルフィッティングを行うことで、電子の温度や密度を導出することができる。この熱雑音を観測するための専用のプラズマ波受信機を "熱雑音受信機 "と呼ばれている。 熱雑音受信機は、電界センサで観測する熱雑音の微弱な電圧変動を観測する必要がある。受信機のノイズレベルは熱雑音の周波数空間におけるスペクトル形状を正確に把握するために、熱雑音の電圧変動よりもはるかに低くなくてはならない。受信機のノイズレベルを低減するためには、低雑音増幅器と狭帯域フィルタが必要不可欠である。しかし、一般的に使用されている低雑音増幅器や狭帯域フィルタは、受信機全体のサイズを大きくしてしまう。本研究の目的は、ASIC技術を利用して熱雑音受信機の小型化を行い、小型宇宙機への搭載を可能にすることである。本論文では、あるプラズマ条件下での熱雑音の信号レベルを理論解析及び数値解析により推定した。その結果をもとに、将来の小型化熱雑音受信機の仕様を提案する。そして、提案された仕様を満足する熱雑音受信機のチップを設計する。
チップは、プリアンプ、バンドパスフィルタ、自動ゲイン制御ループ(AGCループ)、A/Dコンバータから構成されている。熱雑音は他の自然プラズマ波に比べて非常に低いレベルであるため、増幅器の利得とA/Dコンバータのダイナミックレンジとの関係を考慮すると、他のプラズマ波からの「汚染」を避けることが重要である。この汚染を除去するためには、バンドパスフィルタの設計が重要である。熱雑音以外の自然波に対しても十分な低減を得るために5次のバターワースフィルタを採用している。熱雑音の周波数スペクトルはプラズマ密度によって変化するため、バンドパスフィルタの切り替えによって中心周波数と通過帯域を変化させることができるよう設計している。また、主増幅器のゲインも信号レベルに応じてAGCをベースに可変とし、A/Dコンバータのダイナミックレンジと比較して適切な観測範囲を確保している。
チップは、プリアンプ、バンドパスフィルタ、自動ゲイン制御ループ(AGCループ)、A/Dコンバータから構成されている。熱雑音は他の自然プラズマ波に比べて非常に低いレベルであるため、増幅器の利得とA/Dコンバータのダイナミックレンジとの関係を考慮すると、他のプラズマ波からの「汚染」を避けることが重要である。この汚染を除去するためには、バンドパスフィルタの設計が重要である。熱雑音以外の自然波に対しても十分な低減を得るために5次のバターワースフィルタを採用している。熱雑音の周波数スペクトルはプラズマ密度によって変化するため、バンドパスフィルタの切り替えによって中心周波数と通過帯域を変化させることができるよう設計している。また、主増幅器のゲインも信号レベルに応じてAGCをベースに可変とし、A/Dコンバータのダイナミックレンジと比較して適切な観測範囲を確保している。