日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM08] 宇宙天気・宇宙気候

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.03

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、A Antti Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、坂口 歌織(情報通信研究機構)

17:15 〜 18:30

[PEM08-P24] 昭和基地に設置した新たな多周波ミリ波分光計の現状とマルチライン観測の初期結果

*水野 亮1、堤 大陸1、小瀬垣 貴彦1、岩田 裕之1、佐谷 昂樹1、中島 拓1、原谷 浩平1、長浜 智生1、入山 奨基1、溝口 玄真1、範 士迅1、關谷 尚人2、林 拓磨2、堤 雅基3、冨川 喜弘3、江尻 省3、佐藤 薫4 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.山梨大学大学院総合研究部、3.国立極地研究所、4.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:ミリ波分光、極域科学、高エネルギー粒子降り込み、大気微量成分

極域において、太陽活動に伴って降り込んだに高エネルギー粒子により窒素酸化物が生成され、その窒素酸化物が触媒的にオゾンを破壊することが指摘されている。我々は2012年より、高エネルギー粒子の降り込みが大気組成に与える影響を観測的に明らかにするため、昭和基地上空の中間圏および下部熱圏の一酸化窒素およびオゾンのミリ波分光モニタリングを行ってきた。化学的・力学的に関連した複数の分子種を同時に併行して観測し比較を行うことで、大気分子の時間変化の要因を理解する上で有益な情報を得ることができる。しかしながら、一度に観測できる周波数帯域の制限から、両方の分子の線スペクトルを同時にカバーすることができないため、受信周波数を切り替えて一酸化窒素とオゾンを交互に観測せざるを得なかった。このような状況を打破するために、我々は導波管型周波数マルチプレクサを用いた多周波観測のための新しい観測システムを開発した(Nakajima et al. 2020)。

今回、第61次南極地域観測隊で新しい多周波同時受信システムを昭和基地で組み上げ、概ね230GHzから250GHzの間でNO、O3、CO、HO2のスペクトルラインの同時観測が可能となり2020年11月から定常観測を開始した。この観測システムは準光学近似法(Gonzalez, 2016)を用いて新たに設計した周波数無依存光学系で電波を集光し、冷却電力が0.3Wの省電力小型冷凍機(Ulvac UR4K03)を用いて冷却された2個の超伝導ミクサにより2つの周波数帯域の信号を分離し最終段のFFTプロセッサの2GHzの帯域内に再合成することで複数周波数の同時観測を可能にした。

発表では、この観測システムの構成に関する詳細な説明と実機の特性と問題点・課題について整理し、11月以降に取得した観測データの初期解析結果について報告する予定である。

[参考文献]
Nakajima et al., “Waveguide-Type Multiplexer for Multiline Observation of Atmospheric Molecules using Millimeter-Wave Spectroradiometer”, J. Infrared Milli. Terahz Waves, 41, 1530–1555, 2020.
Gonzalez, A. “Frequency Independent Design of Quasi-optical Systems”, J. Infrared Milli. Terahz Waves, 37, 147–159, 2016