17:15 〜 18:30
[PEM12-P01] Arase衛星を用いたOff-EquatorにおいてUHR周波数に同期したコーラス放射変動の解析
キーワード:ホイッスラーモードコーラス、電子密度、Arase衛星
ホイッスラーモードコーラスは、波動粒子相互作用により磁気赤道面付近で発生するプラズマ波動の一種である。コーラスがピッチ角散乱させた電子は極域に降下し、Diffuse Auroraを発生させる。特に、高緯度に伝搬したコーラスは電子との共鳴エネルギーが高く、相対論的電子を降下させうるため、放射線帯電子の消失や中層大気への影響で注目されている。強いコーラスが高緯度まで伝搬するメカニズムは明確でないが、磁力線に沿って電子密度が増加した「ダクト構造」に沿った伝搬が有力である。
Arase衛星に搭載されたPlasma wave experiment (PWE)のOnboard frequency analyzer(OFA)は、2017/3/29 00:06-00:10 UTに、磁気緯度17度、L値6.0でコーラスの強度とUHR周波数が正相関で対応して十数秒周期で変動する現象を観測した。この解釈として、(1)ダクト構造を伝搬するコーラス、(2)UHR周波数付近で発生した別波動とUHR波動の重畳、(3)コーラスによる電子密度変調の3つが挙げられる。(1)については数値計算による先行研究(Hanzelka and Santolik, 2019)が報告されている。しかし、Off-Equatorにおけるダクト構造とそこを伝搬するコーラスの直接観測は報告されていない。(3)の例は、Nishimura et al. (2015)により報告されている。
本研究は、このOff-Equatorにおけるコーラス強度とUHR周波数の対応変動がダクト伝搬を示すものかを検討した。Arase衛星がダクト構造を通過したと仮定して、UHR周波数の時間変動と衛星軌道データから、ダクト構造の空間スケール及び密度増加率を導出した。OFA周波数スペクトル(dt = 1sec)を周波数方向にガウス関数でフィッティングし、UHR周波数を求めた後、Magnetic Field Experiment (MGF)が観測した磁場強度データと合わせて電子密度を導出した。その結果、ダクト構造に対応しうる密度変化を20例確認した。構造の半値全幅と密度増加率全20例の平均は10 km、1.4 %であった(最小5.9 km、1.3 %、最大17 km、1.8 %)。Hanzelka and Santolik (2019)では、様々な空間スケールのダクト構造に対してコーラスのダクト伝搬シミュレーションを行い、ダクト構造として機能しうる空間スケールと電子密度増加率を調べている。今解析結果と比較した結果、Arase衛星が観測した電子密度変化は、コーラスが磁気緯度45度以上まで伝搬角15度以内で伝搬しうるスケールであることが確認された。
本発表では、このイベントが (2) UHR周波数付近の別波動を捉えた可能性についても、波動の偏波情報等を用いて検証する。また、類似イベントを含めた解析結果についても述べる。
Reference:
Hanzelka, M., and Santolik, O. 2019, Geophysical Research Letters, 46, 5735– 5745. doi:10.1029/2019GL083115
Nishimura, Y. et al. 2015, Geophys. Res. Space Physics, 120, 7433– 7446, doi:10.1002/2015JA021330.
Arase衛星に搭載されたPlasma wave experiment (PWE)のOnboard frequency analyzer(OFA)は、2017/3/29 00:06-00:10 UTに、磁気緯度17度、L値6.0でコーラスの強度とUHR周波数が正相関で対応して十数秒周期で変動する現象を観測した。この解釈として、(1)ダクト構造を伝搬するコーラス、(2)UHR周波数付近で発生した別波動とUHR波動の重畳、(3)コーラスによる電子密度変調の3つが挙げられる。(1)については数値計算による先行研究(Hanzelka and Santolik, 2019)が報告されている。しかし、Off-Equatorにおけるダクト構造とそこを伝搬するコーラスの直接観測は報告されていない。(3)の例は、Nishimura et al. (2015)により報告されている。
本研究は、このOff-Equatorにおけるコーラス強度とUHR周波数の対応変動がダクト伝搬を示すものかを検討した。Arase衛星がダクト構造を通過したと仮定して、UHR周波数の時間変動と衛星軌道データから、ダクト構造の空間スケール及び密度増加率を導出した。OFA周波数スペクトル(dt = 1sec)を周波数方向にガウス関数でフィッティングし、UHR周波数を求めた後、Magnetic Field Experiment (MGF)が観測した磁場強度データと合わせて電子密度を導出した。その結果、ダクト構造に対応しうる密度変化を20例確認した。構造の半値全幅と密度増加率全20例の平均は10 km、1.4 %であった(最小5.9 km、1.3 %、最大17 km、1.8 %)。Hanzelka and Santolik (2019)では、様々な空間スケールのダクト構造に対してコーラスのダクト伝搬シミュレーションを行い、ダクト構造として機能しうる空間スケールと電子密度増加率を調べている。今解析結果と比較した結果、Arase衛星が観測した電子密度変化は、コーラスが磁気緯度45度以上まで伝搬角15度以内で伝搬しうるスケールであることが確認された。
本発表では、このイベントが (2) UHR周波数付近の別波動を捉えた可能性についても、波動の偏波情報等を用いて検証する。また、類似イベントを含めた解析結果についても述べる。
Reference:
Hanzelka, M., and Santolik, O. 2019, Geophysical Research Letters, 46, 5735– 5745. doi:10.1029/2019GL083115
Nishimura, Y. et al. 2015, Geophys. Res. Space Physics, 120, 7433– 7446, doi:10.1002/2015JA021330.