日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.03

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[PPS06-P17] 強い圧縮性を考慮したスーパー地球マントル内熱対流の2次元数値シミュレーション

*亀山 真典1,2 (1.国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、2.独立行政法人海洋研究開発機構)

キーワード:スーパー地球、マントル対流、断熱圧縮、粘性率、熱伝導率

本研究では太陽系外の巨大地球型惑星「スーパー地球」のマントル対流の描像の理解を目指し、強い断熱圧縮の効果を考慮した岩石惑星マントルの熱対流に関する2次元数値シミュレーションを行った。ここでは例として、地球の10倍の質量をもつスーパー地球のマントルを想定し、高い粘性率をもつ流体の2次元箱型領域あるいは2次元部分円環領域内における熱対流を、非弾性流体近似 (TALA) のもとで数値的に解く。流体の熱膨張率や (基準) 密度といった熱力学量は深さとともに変化するようにとっているのに対し、粘性率は温度とともに指数関数的に減少し、熱伝導率は深さとともに指数関数的に増加するものとする。

本研究のシミュレーションの結果、熱伝導率の深さ依存性と粘性率の温度依存性の双方が十分強い場合には、上面沿いに発達する「冷たくて固いふた (stagnant lid)」に加えて、マントルの最深部に「深部成層圏 (deep stratosphere)」と呼ぶべき特徴的な構造が形成されることが確認できた。この層の内部は (i) 安定な温度成層と (ii) 鉛直方向の流れが非常に弱い、という点で特徴づけられ、気象学の「成層圏」の性質によく似ている。さらに2種類の形状モデルで得られた結果を比較したところ、部分円環モデルで「深部成層圏」が発生するためには、箱型モデルの場合よりも強い熱伝導率の深さ依存性や粘性率の温度依存性が必要であることが分かった。この違いは、「まるい」部分円環モデルでは深さとともに表面積が小さくなり、それに応じて深部では鉛直方向の温度勾配が急になることによって、マントル深部での温度成層が不安定化しやすくなったことが原因と理解できる。

本研究の結果は、巨大な地球型惑星のマントル対流の描像を理解するには、物性の変化や圧縮性の効果に加えて、「対流容器」たるマントルの形状の効果を適切に取り入れることが非常に重要であることを意味している。さらに、本研究で得られた「まるい」形状の効果は3次元球殻ではより顕著になることを考えると、実際のスーパー地球のマントル内では「深部成層圏」の形成が大きく抑えられ、箱型モデルの結果に基づく従来の予想よりもマントル対流が活発に起こっている可能性が示唆される。