日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.03

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、菊地 紘(宇宙航空研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[PPS06-P21] N体計算を用いた天王星周り衛星形成過程の研究

*木原 遥大1、佐々木 貴教1、井田 茂2 (1.京都大学、2.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:天王星、衛星形成、N体計算

天王星周りには27個の衛星が存在する 。そのうち5つの主要な衛星が衛星系全体の質量の99%を担っている。そして天王星に限らず、巨大惑星まわりの衛星達がどのようなメカニズムで形成されたのかについて様々なモデルが存在する(Canup & Ward. 2006;Sasaki et al. 2010 )。しかし他の太陽系内惑星とは異なり天王星の赤道傾斜角は98度傾いており 、その自転軸の周りを衛星が公転している。そのため上記の論文のモデルをそのまま適用しても、軸を傾けるためのメカニズムを別に考えなければならない。その系を説明する方法として、二つの原始惑星が衝突し、その衝突によって自転軸が曲げられかつ破片が自転軸周りに散らばりデブリ円盤が形成されるというジャイアントインパクト説が提唱された 。実際にこの仮説の元SPH計算が行われた結果 、赤道傾斜角の傾きと衛星の元となるようなデブリ円盤が惑星周りにできることが説明された(Slattery et al.1992 )。そのデブリ円盤をもとにN体計算で今の衛星系を形成できるかが検証されたが、初期円盤の面密度は中心惑星より外側のほうが小さくなるので、外側の衛星の質量が実際の観測結果より小さくなることが分かった(Ishizawa et al. 2019)。上記の外側の衛星の質量が観測より小さくなってしまうという点を解消するために、ジャイアントインパクトによってできたガス円盤の熱進化を考慮した天王星周りの初期円盤モデルが提唱された(Ida et al. 2020)。この研究により、半径が大きくなるにつれて面密度が大きくなるようなデブリ円盤が形成される可能性があることが示唆された。外側に衛星のもととなる固体物質が多いということなので、この円盤は外側に大きい衛星がある天王星系を説明するうえで好都合である。
そこで現在私たちは Ida et al. 2020 で示唆された初期円盤からN体計算を用いて衛星形成過程を記述し、観測から分かっている天王星周りの衛星が再現できるかを確かめる研究をしている。本発表では計算結果及び、観測と一致する点、一致しない点について物理的な解釈も含めて説明する。