日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.04 (Zoom会場04)

コンビーナ:松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター)、川崎 教行(北海道大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、座長:小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、松本 恵(東北大学大学院)

11:45 〜 12:00

[PPS07-15] 硫酸の蒸発に伴う玄武岩の表面変質への紫外線C照射の影響

*小森 信男1 (1.東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科)


キーワード:火星、紫外線C、硫酸、3価鉄、蒸発

火星表面には、大量の酸化鉄や硫酸塩、塩化物等が検出されており、これらは火星表面が赤褐色を帯びている原因である。また、多くの証拠からかつて液体状の水が存在していたと考えられるようになった。
筆者は中学校科学部の探究活動として、水や酸性水溶液に浸した玄武岩や鉄カンラン石に、紫外線を照射し、それらの変化を調べてきた(小森 2020)。火星表面の風化に関連する研究としてGolden et al .(2005)、Cole(2015)等がある。この科学部研究のように、紫外線を照射しながら硫酸中の玄武岩等の変化を調べた実験的研究は、これまで行われていない。
Ⅰ 研究目的
硫酸水溶液に浸した玄武岩が乾燥する過程で、紫外線Cが玄武岩の変質に与える影響を調べ、関連研究と比較することである。
Ⅱ 方法 
1 2つの整形した玄武岩試料を硫酸中に24時間浸す。硫酸は煮沸した精製水に硫酸原液を加えたものである。
2 2つの玄武岩試料を硫酸から取り出し、表面が濡れた状態のまま、それぞれ別の試験管に入れる。試験管内の空気を窒素で置換する。
3 二本の試験管を、紫外線照射器にセットする。紫外線照射器は、20W殺菌灯を4本束にしたものであり、20W/m2程の紫外線Cを試料に照射する。二本の試験管のうち一つは直接照射させ(UVC),もう一つはアルミ箔で覆って照射されない状態にした(N)。
4 紫外線照射後、数日毎に、試験管を紫外線照射器から取り出し、玄武岩試料を肉眼観察し、写真撮影した。その後再度試験管内の空気を窒素置換し,紫外線照射器に戻した。
5 実験後、試料表面に生じた褐色の粉末の分析をXRDで分析した。また試料の表面をデジタル顕微鏡で撮影を行った。
Ⅲ 結果
UVCでは玄武岩表面に、粉末状の物質が生じた。XRDによって、UVC表面に生じた褐色の粉末は、メタホーマナイトを主とする硫酸第二鉄、白色の粉末は石膏であることがわかった。Nでは表面全体に僅かに石膏が生じたと思われる。
Ⅳ 考察
過去の火星上でも、硫酸の海に浸った玄武岩が、海退により乾燥する過程で、紫外線Cによってメタホーマナイト等Fe3+を含む鉱物が生じた可能性がある。
引用文献
Golden .D, Ming..D, R, Morris.R,.(2005): Laboratory-simulated acid-sulfate weathering of basaltic
materials:Implications for formation of sulfates at Meridiani Planum and Gusevcrater, Mars.
Cole, S. (2015): In-Situ Evidence for Alteration by Acid Fog on Husbanb Hill, Gusev Crater, Mars. 2015 GSA Annual Meeting in Baltimore, Paper No.94-10.
小森信男(2020): 中学校科学部における火星に関連する岩石鉱物の風化実験,学校教育学研究論集,Vol42,63-75