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[SCG50-P08] 糸魚川-静岡構造線に伴う破砕帯の内部構造と断層運動の解析
キーワード:糸魚川静岡構造線、断層岩、横川断層
新潟県糸魚川市フォッサマグナパークには糸魚川-静岡構造線の最北部を構成する横川断層が露出する. 横川断層は西側に先新第三系, 東側に新第三系が分布する東落ちの上下成分を伴う左横ずれ断層とされ, 活動時期は山本層堆積以前から今井層の堆積後かつ, 後期中新統中新世から前期鮮新世にかけて活動したと考えられている(長森ほか, 2010). ただし, 現在は活動していないため初期の断層活動履歴を観察することができる. 本研究では, 横川断層の活動史を解明することを目的として, 地表踏査, 断層岩の組織観察, X線回折測定, Rf/φ法を利用した歪み解析を行った.
断層岩の組織と, 姿勢とセンス, 切断関係から断層活動を大きく6つのステージに区分し, 古い方からstage1a~c, 2a・bに区分した. このうち, stage1b~2bについて詳細に記載, 区分した.
Stage1-a・bではR1面の卓越する断層角礫岩が形成された. Stage1cにおいてNE-SW走向, 垂直もしくは高角SE傾斜の正断層成分を持つ左横ずれ断層が活動し, 多くの断層岩が形成された. この時, 先新第三系と新第三系はこの断層で接した. Stage 2ではNE-SW走向, SE傾斜で正断層成分を持つ右横ずれ断層が活動し, Stage 1の断層を切断する. そして, Stage 3としてENE-WSW走向SSE傾斜で逆断層成分を持つ右横ずれ断層が活動した.
X線回折測定から先新第三系の倉谷変成岩類を源岩とする断層岩類の粘土鉱物は大局的にはイライトもしくは緑泥石が卓越するが, 新第三系の安山岩や砂岩を源岩とする断層岩類はスメクタイトが卓越する.
歪み解析は, 断層露頭のstage1cの主断層である断層ガウジから作成したXZ研磨面に対して行った. 合わせて, 断層ガウジ内部に存在するフラグメントの粒径解析を行った. その結果, 断層ガウジ中軸でフラグメントの粒径は小さく, 見かけの歪みは小さいという結果を得た. 一方, 外縁部ではフラグメントの粒径は大きく, 歪みは大きいという結果が得られた.
このことから, 本研究地の断層ガウジは変形集中が断層ガウジ外縁部に生じ, 断層ガウジは側岩を巻き込みながら幅を拡大すると考えられる.
また, Scholz(1987)で提案された式を用いて, 主断層である断層ガウジの変位量を推定した. その結果, 4.7~470mであり, 白石(2003)によって推定された根知-大野帯東縁の断層よりも小さい値となった. このことから, 横川断層は地下深部で根知-大野帯東縁の断層に接続し, 根知-大野帯東縁の断層を主断層とする副断層である可能性がある.
引用文献
長森英明・竹内誠・古川竜太・中澤努・中野俊, 2010, 小滝地域の地質, 地質調査総合センター, p.31-35, 66-69, 130
Scholz, C.H., 1987, Wear and gouge formation in brittle faulting, Geology, 15, p.493-495
白石秀一, 2003, 糸魚川温泉井戸の地質と糸魚川―静岡構造線, フォッサマグナミュージアム研究報告, 第2号, p.1-13
断層岩の組織と, 姿勢とセンス, 切断関係から断層活動を大きく6つのステージに区分し, 古い方からstage1a~c, 2a・bに区分した. このうち, stage1b~2bについて詳細に記載, 区分した.
Stage1-a・bではR1面の卓越する断層角礫岩が形成された. Stage1cにおいてNE-SW走向, 垂直もしくは高角SE傾斜の正断層成分を持つ左横ずれ断層が活動し, 多くの断層岩が形成された. この時, 先新第三系と新第三系はこの断層で接した. Stage 2ではNE-SW走向, SE傾斜で正断層成分を持つ右横ずれ断層が活動し, Stage 1の断層を切断する. そして, Stage 3としてENE-WSW走向SSE傾斜で逆断層成分を持つ右横ずれ断層が活動した.
X線回折測定から先新第三系の倉谷変成岩類を源岩とする断層岩類の粘土鉱物は大局的にはイライトもしくは緑泥石が卓越するが, 新第三系の安山岩や砂岩を源岩とする断層岩類はスメクタイトが卓越する.
歪み解析は, 断層露頭のstage1cの主断層である断層ガウジから作成したXZ研磨面に対して行った. 合わせて, 断層ガウジ内部に存在するフラグメントの粒径解析を行った. その結果, 断層ガウジ中軸でフラグメントの粒径は小さく, 見かけの歪みは小さいという結果を得た. 一方, 外縁部ではフラグメントの粒径は大きく, 歪みは大きいという結果が得られた.
このことから, 本研究地の断層ガウジは変形集中が断層ガウジ外縁部に生じ, 断層ガウジは側岩を巻き込みながら幅を拡大すると考えられる.
また, Scholz(1987)で提案された式を用いて, 主断層である断層ガウジの変位量を推定した. その結果, 4.7~470mであり, 白石(2003)によって推定された根知-大野帯東縁の断層よりも小さい値となった. このことから, 横川断層は地下深部で根知-大野帯東縁の断層に接続し, 根知-大野帯東縁の断層を主断層とする副断層である可能性がある.
引用文献
長森英明・竹内誠・古川竜太・中澤努・中野俊, 2010, 小滝地域の地質, 地質調査総合センター, p.31-35, 66-69, 130
Scholz, C.H., 1987, Wear and gouge formation in brittle faulting, Geology, 15, p.493-495
白石秀一, 2003, 糸魚川温泉井戸の地質と糸魚川―静岡構造線, フォッサマグナミュージアム研究報告, 第2号, p.1-13