日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 変動帯ダイナミクス

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.15

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)

17:15 〜 18:30

[SCG50-P10] 放射状から平行状に遷移する天草の中新世岩脈群の応力解析

*牛丸 健太郎1、山路 敦1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)


キーワード:応力、岩脈、岩床

天草の中新世岩脈は琉球弧と平行なトレンドをもち,沖縄トラフの拡大初期の応力場を示すと考えられてきた(山元, 1991).しかし、天草諸島において248枚の板状貫入岩体を観察した結果、それが放射状岩脈のごく一部にもとづいた速断であったことがわかった。そしてわれわれは、この岩脈群が、放射状から平行状への側方への遷移を示すことを見いだした。これらの貫入年代は14~19 Maで(柴田・富樫, 1975; 永尾ほか, 1992; 濱崎, 1996; 大平ほか, 2012)、母岩は白亜系と古第三系の堆積岩である。

この岩脈群について、2つの方法で応力解析を行った。すなわちまず、放射状から平行状への遷移を記述する2次元弾性体モデル(例えばOdé, 1957)を観察された岩脈の位置とトレンドに最小自乗フィッティングをすることで、貫入時の広域応力の方向を推定した。このモデルは,広域応力とマグマ溜まりからの圧力を受ける弾性体の2次元モデルである.その結果,σHmax軸がほぼ東西方向だったことがわかった.

次に、岩脈群が平行状を呈する範囲でみられた板状貫入岩体の方向データに、混合ビンガム分布(Yamaji and Sato, 2011)をフィッティングして応力を推定した。すなわち、中心の東側で、中心からの距離が30~40 kmの26データである。その結果、σ3軸が南北方向の正断層型とσ3軸が東南東方向の横ずれ断層型応力が検出された。しかし後者は、よく成層した母岩中の岩床から検出された応力なので、広域応力ではなく、母岩の成層構造による見かけの解にすぎないと考えられる。他方、正断層型応力のほうは主応力軸が2次元モデルの結果とよく一致し、広域応力を表しているものと考えられる。その応力比は0.40で、時間的に変動したであろうマグマ圧の95パーセンタイル点がσ3とσ1の値のあいだのどこまで達したかを表すDPI値(Faye et al., 2018)は0.09と小さかった。放射状の中心に近い範囲(中心から4~15 km)のデータからは2つの応力が検出され、DPIは0.38と0.60であった(牛丸・山路, 2020)。つまり、放射状の中心に近いほどマグマ圧が高いという結果が得られた。