09:00 〜 09:15
[SCG52-01] 深層学習によるP波初動極性の自動検測に基づく発震機構解を用いた地殻応力場の推定
キーワード:地震学、地殻応力場、発震機構、応力逆解析、深層学習
地殻変動の理解や内陸地震の予測には、地殻応力場の知見が欠かせない。推定された地殻応力の主軸の方位は、World Stress Map (Heidbach et al., 2018)にまとめられるなど、重要な情報として扱われている。日本列島においては、Terakawa et al. (2010)が防災科学技術研究所(防災科研)のF-netのモーメントテンソル解(概ねM 3.5以上の地震が対象)を用いて、Yukutake et al. (2015)はP波初動極性の手動読み取りに基づく発震機構解を用いて、それぞれ地下の応力場を推定している。このような推定においては、データの多寡が解像度に大きく影響する。発震機構解が推定されていない場所では応力場の推定ができない。そのような場所でも、より小さい地震も解析することで周囲の応力場と大きく異なる応力場が見つかる例(Imanishi et al. (2012))があり、周囲の応力場から補間することが適切でない場合もある。そこで、さらに多数の発震機構解を求めることが必要になってくる。最近の深層学習の進展により、Uchide (2020)はM1.5以上の11万個以上の地震の発震機構解を求めることができた。この手法を使って、本研究ではさらに多くの地震の発震機構解を推定し、それに基づいて日本列島の地殻応力方位を推定した。
まず、HASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)を使って、P波初動極性から日本列島の微小地震・小地震の発震機構解を推定した。防災科研Hi-netと気象庁、産総研GSJの地震観測網で得られた地震波形データ、気象庁一元化処理によるP波到達時刻、Uchide (2020)のニューラルネットワークモデルを使って読み取ったP波初動極性を使用して、気象庁マグニチュード0.5以上で陸地と海岸線から50 km以内の海域を震央に持つ20 km以浅の地震について、発震機構解を決定した。解析した地震の個数は57万3千余りで、これはUchide (2020)の5倍以上の地震個数である。AからCのランクで発震機構解が求まった地震は19万5千個以上で、これらを以下の応力インバージョン解析で用いる。
応力インバージョンは、SATSIプログラム(Hardebeck and Michael, 2006)を用いて行った。グリッド間隔は緯度、経度共に0.2°とした。その結果、東北日本の太平洋沿いに正断層場を広く示したほか、紀伊半島の潮岬付近にも小規模な応力異常が認められた。潮岬の下には高密度の岩体があること(Honda and Kono, 2005)が知られているが、関連については今後の研究に譲る。応力軸方位が構造線や断層などを境に急変する例もいくつか見られた。例えば、糸魚川静岡構造線の南端、四国地方における中央構造線、中国地方における長門飛騨外縁構造線、九州地方の布田川断層と日奈久断層が挙げられる。このような空間的な対応関係が応力場の空間分布を作る原因を知る手掛かりとなると考えられる。
謝辞
本研究では、気象庁一元化処理検測値、防災科研Hi-net、気象庁、産総研GSJの地震観測波形、HASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)、SATSIプログラム(Hardebeck and Michael, 2006)を使用しました。本研究は、産総研エッジランナーズ制度の支援を受けて実施されました。
まず、HASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)を使って、P波初動極性から日本列島の微小地震・小地震の発震機構解を推定した。防災科研Hi-netと気象庁、産総研GSJの地震観測網で得られた地震波形データ、気象庁一元化処理によるP波到達時刻、Uchide (2020)のニューラルネットワークモデルを使って読み取ったP波初動極性を使用して、気象庁マグニチュード0.5以上で陸地と海岸線から50 km以内の海域を震央に持つ20 km以浅の地震について、発震機構解を決定した。解析した地震の個数は57万3千余りで、これはUchide (2020)の5倍以上の地震個数である。AからCのランクで発震機構解が求まった地震は19万5千個以上で、これらを以下の応力インバージョン解析で用いる。
応力インバージョンは、SATSIプログラム(Hardebeck and Michael, 2006)を用いて行った。グリッド間隔は緯度、経度共に0.2°とした。その結果、東北日本の太平洋沿いに正断層場を広く示したほか、紀伊半島の潮岬付近にも小規模な応力異常が認められた。潮岬の下には高密度の岩体があること(Honda and Kono, 2005)が知られているが、関連については今後の研究に譲る。応力軸方位が構造線や断層などを境に急変する例もいくつか見られた。例えば、糸魚川静岡構造線の南端、四国地方における中央構造線、中国地方における長門飛騨外縁構造線、九州地方の布田川断層と日奈久断層が挙げられる。このような空間的な対応関係が応力場の空間分布を作る原因を知る手掛かりとなると考えられる。
謝辞
本研究では、気象庁一元化処理検測値、防災科研Hi-net、気象庁、産総研GSJの地震観測波形、HASHプログラム(Hardebeck and Shearer, 2002)、SATSIプログラム(Hardebeck and Michael, 2006)を使用しました。本研究は、産総研エッジランナーズ制度の支援を受けて実施されました。