日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:畑 真紀(東京大学地震研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、座長:南 拓人(神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻新領域惑星学講座)、畑 真紀(東京大学地震研究所)

10:00 〜 10:15

[SEM14-05] 2018年霧島新燃岳噴火時の空振による電磁場変動

*安仁屋 智1、相澤 広記2、松島 健2 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院所属・地震火山観測研究センター)


キーワード:電磁場変動、爆発的噴火、空振、地震動、界面動電現象、帯水層

新燃岳は、九州地方の霧島火山群中央部に位置する活火山である。2011年1月に約300年振りのマグマ噴火が発生し、6年後の2017年10月と2018年3月から6月にかけて再び噴火が発生するなど、近年特に活動的な火山の1つである。本研究では、新燃岳近傍で記録された広帯域MT (地磁気・地電流) 観測データを用いて、火山噴火に伴う特徴的な電磁場変動と地震計や空振計のデータとの関連性を議論する。

2018年3月から6月の期間において、気象庁火山活動解説資料に抜粋された20個のイベントについて、2観測点 (新燃岳火口から①:西南西に約3.2km②:北西に約5.0km) で記録されたMTデータ5成分と、各MT観測点近傍の2観測点 (①:MT1から約30m②:MT2から約1km) に合わせて設置された地震計3成分・空振計データを使用した。各イベント時のMT生データを測定機器の周波数特性を考慮して物理量 (mV/km, nT) の時系列データを取得した。地震計・空振計データについても同様に物理量 (μm/s, Pa) の時系列データを取得し、地震計については周波数特性を考慮して正しい変位波形 (μm) に計算し直した。

爆発的噴火時の電磁場変動について、空振・地震動上下変位波形と、時間的によく一致していることから、噴火に伴う空振および地震動が観測点に到来し、観測点のごく近傍で電磁場変動を生じていると考えられる (安仁屋, 2020, JpGU) 。Popocatépetl火山での観測例 (Matoza et al., 2019) と同様に、空振波形の最初のN型パルスと地震動上下変位波形が綺麗にカップリングして、空振によって地面が押されていることが分かった。このことから空振が観測点直下の帯水層等の流体を動かし、電磁場変動を励起していると結論される。本研究では、これまで報告されていない空振による電磁場変動に着目し、観測点による変動量や変動軌跡の違い、現時点で考え得る界面動電現象のメカニズム等を整理した。

各MT観測点でのインピーダンステンソルZと地磁気変換関数Tから推定した比抵抗ρ (ohm-m) と位相 (°) を用いて、Ssqインピーダンス (Rung-Arunwan et al., 2017) から1次元構造解析を行った。解析の結果、観測点直下のごく浅部の地下構造が異なることが分かったため、帯水層の深さや、地下水の連結度などが電磁場変動に関係している可能性がある。