11:55 〜 12:10
[SEM14-11] 地形効果を含む海底MTデータを扱う3次元インバージョンコードの開発 ~フォワード問題に関して~
キーワード:地磁気電流法
近年、日本近海における海底電位差磁力計(Ocean Bottom ElectroMagnetometer; OBEM)の新たな設置により、MT法による地下比抵抗構造の推定に利用可能な海底電磁場データの量が大きく増加している。これらのデータの解析に向けて、本研究では海底MTデータの3次元インバージョン法の開発を行う。
本研究では、有限差分法の三次元インバージョンアルゴリズムであるModEM(Egbert and Kelbert, 2012)をベースとして、海底電磁場データに適した手法開発を進めている。海底地形の起伏をより少ない計算要素で組み込むために、Flattening Seafloor(FS)法(Baba and Seama, 2002)をModEMに導入する。海底地形は海とその下の地殻の厚さの差に対応する。この手法では、これらの厚さの差を、伝導度異方性を持つセルの電気的特性の差に変換する。その結果、海底地形は平坦で表現され、起伏の電気的特性を保持した海底面上下の2層だけになる。モデルの単純化により計算機資源と計算時間の節約にもなり、これは特に3Dインバージョンにおいて重要である。
本研究ではまず、海底面上下のグリッドセルの厚さと計算されるMTレスポンスとの関係を調べた。平坦で海底下100Ωm一様の1次元構造を持つ場合を考える。海底面の上下のグリッドセルの厚さを変化させ、フォワード計算によって得られたMTレスポンスの値を理論値と比較した。その結果、フォワード計算されたMTレスポンスと理論値との差は周期10秒においては、上下5mの厚さの場合は5%程度であるが、上下200mの厚さの場合は80%ほどの大きな差が生じた。つまり、海底MTデータを使うときは海底面上下に薄い層を入れることでフォワード計算の精度を向上できることが明らかとなった。
本研究では次に、実験的にFS法を導入したModEMを用いて、海底面境界の上下に0.01mの薄層がある場合(A)とない場合(B)でのFS法フォワード計算を、地形を直接的にグリッドで表現した場合のフォワード計算(C)と比較した。もとの地形には、水深が2750mから3250mにかけてなめらかに変化する2次元的な地形を採用した。この地形はBaba and Seama(2002)で使用されたものと同じである。(A)と(C)の比較の結果、周期1000秒においては、(A)が(C)より見かけ比抵抗で20~40%、位相では30~40°ほど小さい値になった。一方で、(B)のMTレスポンスの値は(C)の計算結果と概ね一致した。地形の起伏部分においてその誤差は約10%である。
さらに、FS法順計算の数値グリッド作成の際には、対象領域の外側に広く計算領域を用意する必要があることもわかった。2次的な起伏のある領域だけで数値グリッドを作った場合、主にMTレスポンスのXY成分(TMモード)の数値グリッドの端の値が異常値を示す。その異常値と、地形を数値グリッドで直接表現して計算された正常値との差は周期1000秒の場合で40~80%ほどになる。この地形で周期1000秒におけるこの異常値を避けるためには、計算領域を水平方向に約300km以上広げる必要が生じた。これはModEMによる数値グリッドの境界条件がFS法に適したものになっていないことが原因であると考えられる。ModEMの境界条件は伝導度異方性を考慮していないからである。
本研究では、有限差分法の三次元インバージョンアルゴリズムであるModEM(Egbert and Kelbert, 2012)をベースとして、海底電磁場データに適した手法開発を進めている。海底地形の起伏をより少ない計算要素で組み込むために、Flattening Seafloor(FS)法(Baba and Seama, 2002)をModEMに導入する。海底地形は海とその下の地殻の厚さの差に対応する。この手法では、これらの厚さの差を、伝導度異方性を持つセルの電気的特性の差に変換する。その結果、海底地形は平坦で表現され、起伏の電気的特性を保持した海底面上下の2層だけになる。モデルの単純化により計算機資源と計算時間の節約にもなり、これは特に3Dインバージョンにおいて重要である。
本研究ではまず、海底面上下のグリッドセルの厚さと計算されるMTレスポンスとの関係を調べた。平坦で海底下100Ωm一様の1次元構造を持つ場合を考える。海底面の上下のグリッドセルの厚さを変化させ、フォワード計算によって得られたMTレスポンスの値を理論値と比較した。その結果、フォワード計算されたMTレスポンスと理論値との差は周期10秒においては、上下5mの厚さの場合は5%程度であるが、上下200mの厚さの場合は80%ほどの大きな差が生じた。つまり、海底MTデータを使うときは海底面上下に薄い層を入れることでフォワード計算の精度を向上できることが明らかとなった。
本研究では次に、実験的にFS法を導入したModEMを用いて、海底面境界の上下に0.01mの薄層がある場合(A)とない場合(B)でのFS法フォワード計算を、地形を直接的にグリッドで表現した場合のフォワード計算(C)と比較した。もとの地形には、水深が2750mから3250mにかけてなめらかに変化する2次元的な地形を採用した。この地形はBaba and Seama(2002)で使用されたものと同じである。(A)と(C)の比較の結果、周期1000秒においては、(A)が(C)より見かけ比抵抗で20~40%、位相では30~40°ほど小さい値になった。一方で、(B)のMTレスポンスの値は(C)の計算結果と概ね一致した。地形の起伏部分においてその誤差は約10%である。
さらに、FS法順計算の数値グリッド作成の際には、対象領域の外側に広く計算領域を用意する必要があることもわかった。2次的な起伏のある領域だけで数値グリッドを作った場合、主にMTレスポンスのXY成分(TMモード)の数値グリッドの端の値が異常値を示す。その異常値と、地形を数値グリッドで直接表現して計算された正常値との差は周期1000秒の場合で40~80%ほどになる。この地形で周期1000秒におけるこの異常値を避けるためには、計算領域を水平方向に約300km以上広げる必要が生じた。これはModEMによる数値グリッドの境界条件がFS法に適したものになっていないことが原因であると考えられる。ModEMの境界条件は伝導度異方性を考慮していないからである。