日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL22] 地球年代学・同位体地球科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

17:15 〜 18:30

[SGL22-P05] 長崎県五島列島の層序と年代

*池端 雄太1、清川 昌一2、堤 之恭3、堀江 憲路4、竹原 真美4 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3.国立科学博物館、4.国立極地研究所)

キーワード:長崎県五島列島、層序、年代

五島列島は長崎県本土の西方約100kmに位置し,北東-南西方向に配列する5つの島(福江島,久賀島,奈留島,若松島,中通島)と約140余りの小島からなる.五島列島の全域には中新世の堆積岩からなる五島層群と流紋岩類や花崗岩類が分布し,海岸線に沿って第四紀の玄武岩火山が分布する.我々は,五島層群についての詳細な層序を求めるため,上記の5つの島の地質図を作成し,層序を復元した.結果,五島層群は3つの層に区分でき,下部層(層厚300m+)は緑色火山岩砕屑岩、中部層(層厚約1000m)は泥岩優勢で、リップルラミナをもつ砂岩泥岩互層,上部層(層厚約1500m)は斜交層理を多く含む厚い砂岩を主体とする砂岩泥岩互層からなる.五島層群は、不整合で流紋岩火山砕屑岩類(五島流紋岩類)に覆われており,福江島では,福江流紋岩類(松井・河田, 1986)および奈良尾流紋岩類(新称)からなる.

これらの岩石の年代は,福江流紋岩類は全岩K-Ar年代で15.5±0.4Ma(NEDO, 1990),花崗岩類は全岩K-Ar年代で13.2±1.0Ma(河田ほか, 1994)という年代値が得られている.19-15Maを示す五島層群のフィッショントラック年代(Ishikawa and Tagami, 1991)もあるが,これらは誤差が大きい.

本研究では,五島層群および五島流紋岩類についての堆積年代を明らかにするため,ジルコンのU-Pb年代測定を行い,それぞれの岩石における精度の良い年代値を得た.

五島層群下部層の最下部の緑色火砕岩には,多くの円磨されたジルコンが含まれ,1億年前から18億年前の年代を示すものが多いが,その中で角張った小さいジルコンから21.7±0.5Ma,22.6±0.5Maが得られた.これは現在までに報告されている五島層群の年代で最も古い.奈留島では,五島層群中部層に狭在する流紋岩火山砕屑岩類が17.66±0.19Maを示す.福江流紋岩類の年代測定に用いた試料は流紋岩質の凝灰角礫岩と白色流紋岩である.得られた年代はそれぞれ16.36Ma±0.09Ma,16.80±0.36Maであった.

今回の年代測定により,以下の地層年代が明らかになった.五島層群下部層の火山性砕石物は,20-18Ma頃,中部層の砂岩泥岩互層は17.5-17Ma, 上部層は17Ma-16.5 Maに堆積したと思われる.つまり五島層群の堆積時期は西日本の時計回り回転時期(星, 2018)に重なる.一方,五島流紋岩類については,福江流紋岩類について2カ所で16.5 Maの年代が取得でき,フィッショントラック年代も同様の年代が報告されており,五島層群の砂岩層堆積後に火山活動により形成したと考えられる.しかし,今のところ福江島において五島層群と福江流紋岩類との地層関係がみつかっておらず,その分布から正断層により福江流紋岩類が福江島中央部に分布していると考えている.一方,奈良尾流紋岩類は,15.5Maを示し,1Maほど福江流紋岩類より新しい.本層は五島層群との不整合が各地で確認されており,五島層群が堆積し,変形が進み,ある程度侵食が進んだ後に火山活動が起こったと考えられる.