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[SMP25-P13] 山口県、宇内地域に分布する接触変成岩類の変成分帯とP-T条件
キーワード:宇内地域、接触変成作用、変成分帯、鉱物化学組成
宇内地域は山口県宇部市と美祢市の境界付近の地域であり、周防変成帯に属している。岸ほか(2007)は、この地域に天郷深成貫入岩類、黒五郎深成岩類、岩郷山花崗岩類からなる深成複合岩体が貫入したと報告しており、それぞれのK–Ar年代は97.9 ± 2.2 Ma、94.0 ± 4.8 Ma、92.8 ± 2.0 Maである。これらの深成岩体は約14 × 8 kmの範囲で露出しており、これらの貫入により、宇内地域の周防変成岩類は接触変成岩になっている(瀬尾, 1976)。本研究では、この接触変成岩類について、鉱物組合せ・鉱物化学組成・変成分帯・変成P–T条件について報告する。
宇内地域には主に変成岩類と花崗閃緑岩類が分布している。変成岩類は接触変成岩類(主として泥質片岩で、少量の石灰珪質片岩を伴う)と、源岩の周防変成岩類で構成され、花崗閃緑岩類は黒雲母-単斜輝石-角閃石花崗閃緑岩、単斜輝石-黒雲母-角閃石花崗閃緑岩の2種類に区分できる。地域中央部には花崗閃緑岩が分布する。花崗閃緑岩類の周縁部には幅約500 mの接触変成岩類が分布し、ほとんどが泥質片岩であるが、石灰珪質片岩が小規模なレンズ状をなして産する。さらにその周縁部には接触変成作用を被っていない周防変成岩類が分布する。
泥質片岩について鉱物出現・消滅アイソグラッドを検討し、以下のように変成分帯を行った。泥質片岩の主要な鉱物組合せは以下の通りである。
Zone Ⅰ(菫青石帯) : Qz + Pl + Ms + Bt + Crd + (Chl)
Zone Ⅱ(紅柱石帯) : Qz + Pl + Ms + Bt + And + Crd
Zone Ⅲ(カリ長石帯) : Qz + Pl + Bt + Ms + Kfs + Crn +And + Crd + Ilm
Zone Ⅳ(ざくろ石帯) : Qz + Pl + Bt + Kfs + Opx + Crd + And + Spl + Alm
Zone Ⅴ(スピネル帯) : Qz + Pl + Bt +Kfs + Opx + Crd + And + Spl
Zone Ⅵ(珪線石帯) : Bt + Opx + Pl + Kfs + Crd + Qz + Spl + Sil + Ilm.
また、Zone Ⅵにみられる石灰珪質片岩の主要な鉱物組合せは以下の通りである。
Zone Ⅵ(珪線石帯) : Pl + Cpx + Cal + Qz + Grs
泥質片岩の構成鉱物の化学的特徴は以下の通りである。なお、本要旨ではXMg = Mg/(Fe + Mg)、XMg* = Mg/(Mg + Fe2+ + Fe3+)とする。なおスピネル類のFe2+とFe3+は化学量論を用いて計算した。斜長石はAn = 4.1 ~ 43.9%を示し、Zone ⅠからZone ⅥにかけてAn成分が増加する。黒雲母はXMg = 0.34 ~ 0.62であり、Ti含有量にはばらつきがみられる。白雲母はXMg = 0.53 ~ 0.61であり、Al含有量にはばらつきがみられる。直方輝石はXMg = 0.42 ~ 0.43である。スピネルはXMg* = 0.29 ~ 0.33で、Zn = 0.002 ~ 0.007 apfu、Cr = 0.005 ~ 0.020 apfu である。Zone Ⅳのざくろ石の組成はAlm55.4~58.7Prp41.0~44.3Sps0.2~0.5Grs0.1を示し、almandine成分に富む。
なお、Zone Ⅵの石灰珪質片岩の構成鉱物の化学的特徴は以下の通りである。斜長石はAn = 91.0~ 96.8%を示す。単斜輝石はXMg = 0.68 ~ 0.79で、diopsideの組成を示す。ざくろ石の組成はAlm10.5~16.8Prp1.3~2.2Sps0.4~1.3Grs80.1~87.5を示し、grossular成分に富む。
これらの鉱物組合せの多様さや、鉱物化学組成の違いは変成度を反映していると考えられる。
これらをもとに宇内地域の変成ピーク時のP–T条件を計算すると、変成圧力条件は約0.8 kbarで、変成温度条件は、Zone Ⅰで約500 ℃、Zone Ⅱで500 ~ 550 ℃、Zone Ⅲで550 ~ 600 ℃、Zone Ⅳ・Zone Ⅴで約600 ~ 750 ℃、Zone Ⅵは750 ℃程度以上という結果が得られた。すなわち、最高変成度は輝石ホルンフェルス相の条件に達していると推測される。
引用文献
岸 司ほか(2007) 地質雑, 113, 479-491.
瀬尾孝文(1976) 小島丈兒先生還暦記念論文集, 276-285.
宇内地域には主に変成岩類と花崗閃緑岩類が分布している。変成岩類は接触変成岩類(主として泥質片岩で、少量の石灰珪質片岩を伴う)と、源岩の周防変成岩類で構成され、花崗閃緑岩類は黒雲母-単斜輝石-角閃石花崗閃緑岩、単斜輝石-黒雲母-角閃石花崗閃緑岩の2種類に区分できる。地域中央部には花崗閃緑岩が分布する。花崗閃緑岩類の周縁部には幅約500 mの接触変成岩類が分布し、ほとんどが泥質片岩であるが、石灰珪質片岩が小規模なレンズ状をなして産する。さらにその周縁部には接触変成作用を被っていない周防変成岩類が分布する。
泥質片岩について鉱物出現・消滅アイソグラッドを検討し、以下のように変成分帯を行った。泥質片岩の主要な鉱物組合せは以下の通りである。
Zone Ⅰ(菫青石帯) : Qz + Pl + Ms + Bt + Crd + (Chl)
Zone Ⅱ(紅柱石帯) : Qz + Pl + Ms + Bt + And + Crd
Zone Ⅲ(カリ長石帯) : Qz + Pl + Bt + Ms + Kfs + Crn +And + Crd + Ilm
Zone Ⅳ(ざくろ石帯) : Qz + Pl + Bt + Kfs + Opx + Crd + And + Spl + Alm
Zone Ⅴ(スピネル帯) : Qz + Pl + Bt +Kfs + Opx + Crd + And + Spl
Zone Ⅵ(珪線石帯) : Bt + Opx + Pl + Kfs + Crd + Qz + Spl + Sil + Ilm.
また、Zone Ⅵにみられる石灰珪質片岩の主要な鉱物組合せは以下の通りである。
Zone Ⅵ(珪線石帯) : Pl + Cpx + Cal + Qz + Grs
泥質片岩の構成鉱物の化学的特徴は以下の通りである。なお、本要旨ではXMg = Mg/(Fe + Mg)、XMg* = Mg/(Mg + Fe2+ + Fe3+)とする。なおスピネル類のFe2+とFe3+は化学量論を用いて計算した。斜長石はAn = 4.1 ~ 43.9%を示し、Zone ⅠからZone ⅥにかけてAn成分が増加する。黒雲母はXMg = 0.34 ~ 0.62であり、Ti含有量にはばらつきがみられる。白雲母はXMg = 0.53 ~ 0.61であり、Al含有量にはばらつきがみられる。直方輝石はXMg = 0.42 ~ 0.43である。スピネルはXMg* = 0.29 ~ 0.33で、Zn = 0.002 ~ 0.007 apfu、Cr = 0.005 ~ 0.020 apfu である。Zone Ⅳのざくろ石の組成はAlm55.4~58.7Prp41.0~44.3Sps0.2~0.5Grs0.1を示し、almandine成分に富む。
なお、Zone Ⅵの石灰珪質片岩の構成鉱物の化学的特徴は以下の通りである。斜長石はAn = 91.0~ 96.8%を示す。単斜輝石はXMg = 0.68 ~ 0.79で、diopsideの組成を示す。ざくろ石の組成はAlm10.5~16.8Prp1.3~2.2Sps0.4~1.3Grs80.1~87.5を示し、grossular成分に富む。
これらの鉱物組合せの多様さや、鉱物化学組成の違いは変成度を反映していると考えられる。
これらをもとに宇内地域の変成ピーク時のP–T条件を計算すると、変成圧力条件は約0.8 kbarで、変成温度条件は、Zone Ⅰで約500 ℃、Zone Ⅱで500 ~ 550 ℃、Zone Ⅲで550 ~ 600 ℃、Zone Ⅳ・Zone Ⅴで約600 ~ 750 ℃、Zone Ⅵは750 ℃程度以上という結果が得られた。すなわち、最高変成度は輝石ホルンフェルス相の条件に達していると推測される。
引用文献
岸 司ほか(2007) 地質雑, 113, 479-491.
瀬尾孝文(1976) 小島丈兒先生還暦記念論文集, 276-285.