09:15 〜 09:30
[SSS09-02] ランダムに分布する線クラック群を伝播するSH波の伝播
キーワード:地震波動、クラック、散乱、波動論、輻射伝達理論
近年,固体地球のランダムな不均質構造の解析が一段と進められ、特に速度ゆらぎのパワースペクトル密度の測定結果が数多く報告されるようになった(Sato, 2019a)。一方、現象論的な等方散乱係数の測定も数多く報告されている (Sato,2019b)。特に火山地帯や月などにおける等方散乱係数は、ランダム媒質モデルに基づく平均的なパワースペクトル密度から推定される値よりも大きく、これは分布する空孔やクラックなどの寄与を示唆していると思われる。本研究では、多数の平行な線状クラックが一様ランダムに分布する2次元媒質において、点震源から等方に輻射されたSH波の伝播を輻射伝達理論基づいて考察する。
素過程としての一つの線状クラックによるSH波の散乱は、マシュー関数を用いて解くことができる。線状クラックによる散乱微分断面積は非等方であり、クラック軸方向から測った入射角と散乱角の双方に依存する。クラックに垂直な入射の場合には散乱(反射)が強く、平行な入射の場合には散乱は生じない。散乱分布は、入射方向によらずクラック軸について常に対称となる。ラインダム一様に分布する線状クラックの場合、単位面積あたりの散乱強度を表す散乱係数は、分布数密度nと散乱微分断面積の積で表される。この散乱係数を確率統計的に解釈することで、モンテカルロ法によって波動強度の伝播を計算できる。 x軸に平行な線状クラック (半長a =0.5mm)がn =0.01mm-2で分布する場合を考え, 花崗岩を例として媒質のS波速度は2.7km/sとし、単位強度のSH波(3.44MHz,ak0=4)が座標原点から等方に輻射された場合について、SH波強度の時空分布を求めた。x軸上の観測点における直達波の強度は伝播距離に関して幾何減衰を示すが、クラックに垂直なy軸上の観測点では幾何減衰に加えて散乱減衰の効果が大きい。十分な時間が経過すると震央を中心に散乱波の集積が生じるが、これはクラック軸方向に伸びた分布を示す。直達波や集積した散乱波の強度分布の方位角依存性は、素過程のクラック散乱の異方性を反映したものである。これらの結果は、差分や境界積分法による数値波動計算や (Murai et al. l995, Yomogida & Benites 2002),花崗岩を用いた超音波S波の散乱計測の結果(Fukushima et al. 2003)とも調和的である。
本研究は最も簡単な線状クラック群によるSH波強度の伝播の解析であるが、今後、3次元媒質における扁平クラック群による弾性波強度の伝播の解析が期待される。
素過程としての一つの線状クラックによるSH波の散乱は、マシュー関数を用いて解くことができる。線状クラックによる散乱微分断面積は非等方であり、クラック軸方向から測った入射角と散乱角の双方に依存する。クラックに垂直な入射の場合には散乱(反射)が強く、平行な入射の場合には散乱は生じない。散乱分布は、入射方向によらずクラック軸について常に対称となる。ラインダム一様に分布する線状クラックの場合、単位面積あたりの散乱強度を表す散乱係数は、分布数密度nと散乱微分断面積の積で表される。この散乱係数を確率統計的に解釈することで、モンテカルロ法によって波動強度の伝播を計算できる。 x軸に平行な線状クラック (半長a =0.5mm)がn =0.01mm-2で分布する場合を考え, 花崗岩を例として媒質のS波速度は2.7km/sとし、単位強度のSH波(3.44MHz,ak0=4)が座標原点から等方に輻射された場合について、SH波強度の時空分布を求めた。x軸上の観測点における直達波の強度は伝播距離に関して幾何減衰を示すが、クラックに垂直なy軸上の観測点では幾何減衰に加えて散乱減衰の効果が大きい。十分な時間が経過すると震央を中心に散乱波の集積が生じるが、これはクラック軸方向に伸びた分布を示す。直達波や集積した散乱波の強度分布の方位角依存性は、素過程のクラック散乱の異方性を反映したものである。これらの結果は、差分や境界積分法による数値波動計算や (Murai et al. l995, Yomogida & Benites 2002),花崗岩を用いた超音波S波の散乱計測の結果(Fukushima et al. 2003)とも調和的である。
本研究は最も簡単な線状クラック群によるSH波強度の伝播の解析であるが、今後、3次元媒質における扁平クラック群による弾性波強度の伝播の解析が期待される。