日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS09] 地震波伝播:理論と応用

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.18 (Zoom会場18)

コンビーナ:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、西田 究(東京大学地震研究所)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、岡本 京祐(産業技術総合研究所)、座長:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、大久保 蔵馬(防災科学技術研究所)

10:15 〜 10:30

[SSS09-06] 融雪洪水に伴う流量変動とHi-netで捉えられた雑微動パワーとの関係

*澤崎 郁1、P.C. Shakti1 (1.National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

キーワード:融雪洪水、地震計ノイズ、河川流量

長野県と新潟県にまたがり流れる関川の流域は豪雪地帯に位置し、毎年3月から5月ごろにかけて融雪に伴い流量が増加する。この流量の変動とほぼ同期して、流域内に設置されているHi-net観測点のノイズレベルが変化する。本研究では、2012年3月から5月にかけて関川流域内のHi-net観測点で捉えられたノイズレベルを調査し、関川の流量との関係を調査した。

Hi-net N.MKOH およびN.MKGH観測点は、それぞれ関川中流域の標高240mおよび上流域の標高1305mに設置されている。N.MKOH観測点は集落や道路に囲まれ、社会活動に伴うノイズが観測されるのに対し、N.MKGH観測点は山中にあり社会活動起源のノイズはほとんど観測されない。N.MKOH観測点から10kmほど下流には関川の二子島流量観測点があり、この地点の標高は65mである。解析対象期間のHi-netの上下動記録について、1分毎にパワースペクトルを計算し、0.5Hzから32Hzまで、オクターブ幅ごとの6帯域におけるパワーの時系列を作成した。地震等による過渡的な信号を取り除くため、連続する10分間の中でパワーが最小となる1分間での値を、その10分間を代表するノイズパワーとして採用した。最後に、1時間ごとのパワーの平均値をとり、1時間サンプルの時系列記録を3か月分作成した。なお、二子島観測点での流量も1時間ごとに測定されている。

N.MKOH観測点のノイズパワーと流量との比較においては、社会活動に伴うノイズが少ない20時から24時までのデータのみを参照した。その結果、特に2-16Hzの帯域で、解析期間を通じて流量との明瞭な相関がみられた。ノイズパワーは、流量がある閾値より少ないときは流量に依存せず、閾値以上になると流量のほぼ1乗に比例して増加し、流量がさらに増えると流量の1-2乗に比例して励起された。解析期間を通じて、流量に対するノイズパワーの比はほぼ一定であった。

一方、上流に位置するN.MKGHでは、3月中はノイズと流量との相関があまり見られず、4月以降徐々に明瞭な相関がみられるようになった。流量に対するノイズパワーの比は、4月以降時間が経つごとに増加した。関川流域のアメダス観測点における気温および積雪深記録によると、上流域では4月以降になって初めて雪融けが進み始めたことが示唆される。そのため、3月中は上流域の流量が少なく、中流域にある二子島観測点の流量と相関を持たないが、時間が経つにつれて融雪が進み上流域の流量が徐々に増し、その流量が二子島観測点の流量と相関を持つようになったと考えられる。