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[SSS10-P07] 有限要素解析による諏訪湖周辺断層面の傾斜角に関するパラメトリックスタディー
キーワード:諏訪湖、糸魚川-静岡構造線断層帯、有限要素法、パラメトリックスタディー
諏訪盆地は糸魚川−静岡構造線断層帯の中北部と中南部の間に位置し,糸魚川−静岡構造線断層帯の断層変位・地震防災を議論する上で重要な地域と言える.諏訪盆地はプルアパート盆地であると古くから考えられており(藤森 1991),諏訪湖より北側の断層セグメントでは東傾斜の逆断層を示唆するデータ(萩原・他 1986; Ikami et al. 1986; Sato et al. 2004)が,諏訪湖より南側の断層セグメントでは西傾斜の逆断層を示唆するデータ(平川・他 1989: 隈本・池田 1993; 狩野 et al. 2004)がそれぞれ報告されている.これらの研究は,諏訪湖を境にして北部と南部で地質構造が大きく異なることを示唆しているが,
既往の研究結果から想定される断層面傾斜角を諏訪湖周辺に延伸して適用できるのかどうかについては検討の余地がある.
本研究では数値シミュレーションを通じてこの検討を実施する.すなわち,諏訪盆地が断層変位によって作られるプルアパート盆地であると仮定したとき,適切な広域応力場と断層モデルを設定した数値シミュレーションによって諏訪湖を含む地域一帯での地盤沈降が再現される必要がある.そこで本研究では,諏訪湖を含む地域一帯で生じるべき地盤沈降という観点から,諏訪盆地を限る断層面の傾斜角を三次元有限要素解析を通じて推定する.
既往の調査結果より,諏訪湖周辺では4面の断層面(諏訪湖南岸断層群2面,:諏訪湖北岸断層群2面)をモデル化し,これら4つの断層面の傾斜角をそれぞれ70°から 110°まで5°刻みで変化させてパラメトリックスタディーを実施することで,プルアパート盆地となる断層面傾斜角の組を考察した.なお,全シミュレーションケース数は6561であり,シミュレーションは有限要素法に基づく汎用工学ソフトウェアCOMSOL Multiphysics上で実装・実行した.パラメトリックスタディーの結果,諏訪湖を生成可能とする断層面傾斜角(4面分)の範囲が有限要素解析を通じて示唆された.なお,諏訪盆地中央部に向かって断層面が落ち込むモデルでは,ポップアップが生じ,プルアパート盆地として成立しないこと等の知見も併せて得られた.
日本ではプルアパート盆地の他の事例として,四国中央部の中央構造線断層帯が知られている.今後,同断層帯を対象として検討を行う.
謝辞:
本研究は,文部科学省科学技術基礎調査等委託事業「活断層帯から生じる連動型地震の発生予測に向けた活断層調査研究(課題A)」ならびに「連動型地震の発生予測のための活断層調査研究」の一部として実施しました.ここに記して謝意を表します.
参考文献
藤森孝俊. 1991. “活断層からみたプルアパートベイズンとしての諏訪盆地の形成” 地理学評論 Ser. A 64 (10): 665–96.
萩原・他. 1986. “糸魚川-静岡構造線の重力調査(I) −松本盆地中央部のブーゲ異常と構造解析” 地震研究所彙報,61: 537-550.
平川・他. 1989. “巨摩山地北東縁・下円井の活断層露頭” 活断層研究 6: 43-46.
Ikami et al. 1986. “A Seismic-Refraction Profile in and around Nagano Prefecture, Central Japan.” Journal of Physics of the Earth 34 (6): 457–74.
狩野 ・他. 2004. “糸魚川—静岡構造線活断層系, 下円井断層に伴う粉砕起源のシュードタキライト” 地質学雑誌 110 (12): 779–790.
隈本・池田. 1993. “南部フォッサマグナ, 甲府盆地の低角逆断層の地下構造とネットスリップ” 地震 第2輯 46 (3): 245–58.
Sato, et al. 2004. “Seismological and Geological Characterization of the Crust in the Southern Part of Northern Fossa Magna, Central Japan.” Earth, Planets and Space 56 (12): 1253–59.
既往の研究結果から想定される断層面傾斜角を諏訪湖周辺に延伸して適用できるのかどうかについては検討の余地がある.
本研究では数値シミュレーションを通じてこの検討を実施する.すなわち,諏訪盆地が断層変位によって作られるプルアパート盆地であると仮定したとき,適切な広域応力場と断層モデルを設定した数値シミュレーションによって諏訪湖を含む地域一帯での地盤沈降が再現される必要がある.そこで本研究では,諏訪湖を含む地域一帯で生じるべき地盤沈降という観点から,諏訪盆地を限る断層面の傾斜角を三次元有限要素解析を通じて推定する.
既往の調査結果より,諏訪湖周辺では4面の断層面(諏訪湖南岸断層群2面,:諏訪湖北岸断層群2面)をモデル化し,これら4つの断層面の傾斜角をそれぞれ70°から 110°まで5°刻みで変化させてパラメトリックスタディーを実施することで,プルアパート盆地となる断層面傾斜角の組を考察した.なお,全シミュレーションケース数は6561であり,シミュレーションは有限要素法に基づく汎用工学ソフトウェアCOMSOL Multiphysics上で実装・実行した.パラメトリックスタディーの結果,諏訪湖を生成可能とする断層面傾斜角(4面分)の範囲が有限要素解析を通じて示唆された.なお,諏訪盆地中央部に向かって断層面が落ち込むモデルでは,ポップアップが生じ,プルアパート盆地として成立しないこと等の知見も併せて得られた.
日本ではプルアパート盆地の他の事例として,四国中央部の中央構造線断層帯が知られている.今後,同断層帯を対象として検討を行う.
謝辞:
本研究は,文部科学省科学技術基礎調査等委託事業「活断層帯から生じる連動型地震の発生予測に向けた活断層調査研究(課題A)」ならびに「連動型地震の発生予測のための活断層調査研究」の一部として実施しました.ここに記して謝意を表します.
参考文献
藤森孝俊. 1991. “活断層からみたプルアパートベイズンとしての諏訪盆地の形成” 地理学評論 Ser. A 64 (10): 665–96.
萩原・他. 1986. “糸魚川-静岡構造線の重力調査(I) −松本盆地中央部のブーゲ異常と構造解析” 地震研究所彙報,61: 537-550.
平川・他. 1989. “巨摩山地北東縁・下円井の活断層露頭” 活断層研究 6: 43-46.
Ikami et al. 1986. “A Seismic-Refraction Profile in and around Nagano Prefecture, Central Japan.” Journal of Physics of the Earth 34 (6): 457–74.
狩野 ・他. 2004. “糸魚川—静岡構造線活断層系, 下円井断層に伴う粉砕起源のシュードタキライト” 地質学雑誌 110 (12): 779–790.
隈本・池田. 1993. “南部フォッサマグナ, 甲府盆地の低角逆断層の地下構造とネットスリップ” 地震 第2輯 46 (3): 245–58.
Sato, et al. 2004. “Seismological and Geological Characterization of the Crust in the Southern Part of Northern Fossa Magna, Central Japan.” Earth, Planets and Space 56 (12): 1253–59.