[S-SS10] 活断層と古地震

[SSS10-P11] 南海地震水没伝承「黒田郡」の痕跡発掘に向けた沿岸域海底調査：高知県須崎市野見湾を例に

★招待講演

*谷川 亘¹、村山 雅史²、井尻 暁¹、廣瀬 丈洋¹、岡崎 啓史¹、濱田 洋平¹、浦本 豪一郎²、星野 辰彦¹、山本 裕二²、正木 裕香³、徳山 英一² (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構　高知コア研究所、2.高知大学　海洋コア総合研究センター、3.コスモス商事)

キーワード：水中遺構、黒田郡、波食棚、南海地震、Structure from Motion (SfM)、後方散乱強度

高知県須崎市野見湾では，白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが，その証拠は見つかっていない．そこで本研究では，野見湾の井戸の目撃情報のある地点を中心に海底地形・地盤調査，海底観察，および底質調査を実施し，海底に集落が水没した可能性を検討し，『黒田郡』の痕跡（集落跡（遺構）・遺物）の探索・確認を行った．さらに，Structure from Motion (SfM)多視点ステレオ写真測量技術を用いた3次元海底構造記録と360度水中カメラを使用した水中映像記録を行い，水中遺構調査への応用可能性について評価を行った．
その結果，海底遺構（井戸）の目撃情報がある戸島北東部の海底浅部（水深6～7 m）に，面積約0.09 km²の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した．台地表層は主に薄い砂で覆われており，沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった．また，砂層の下位は硬い基盤岩と考えられ，海底台地は旧海食台（波食棚）と推定される．海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は約7 m沈降したと推定できる．インターフェロメトリーソナーによる後方散乱強度分布で周囲と比較して強度が高いポイントと低いポイントについて潜水調査を実施した結果、海底表層に蛸壺などの人工物を発見することができた．本調査では黒田郡の痕跡は発見できなかったが，水中遺跡研究に対する多角的な調査手法を検討することができた．特に，後方散乱強度分布による底質観察とStructure from Motion（SfM）技術を用いた海底微地形の構築は，今後浅海における水中遺跡調査に活用できる．

謝辞
本研究は，JSPS科研費挑戦的萌芽研究（研究課題26560147，代表徳山英一）とJSPS科研費基盤研究B（研究課題16H03103，代表徳山英一；研究課題20H04309，代表村山雅史），および一般財団法人高銀地域経済振興財団助成金（代表山本裕二）により実施されたものである．