日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC27] 火山防災の基礎と応用

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.13

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:30

[SVC27-P02] 室内実験での軽石粉砕過程における軽石質石基の選択的粉砕

*竹内 晋吾1 (1.一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)

キーワード:軽石粉砕分級実験、火山灰災害、斑晶、火山ガラス

火山岩の粉砕特性は、噴火過程における火山灰発生の観点から実験的研究が最近盛んに行われている。また、設備・機器への火山灰影響実験に供する目的で火山岩を粉砕・分級し、人工火山灰を作成する際にも重要な特性となる。筆者は、人工火山灰作成の観点から多孔質火山岩の粉砕特性をこれまで実験的に調べてきた(竹内, 2020)。本発表では、斑晶を含む軽石の粉砕・分級において生じる各粒径階級(φスケール)での結晶とガラスの割合の変化について述べる。

 本粉砕実験では大量かつ安定的に入手でき、軽石質粒子の生成が期待される大隅降下軽石(Os)を原料としている。Os原料をジョークラッシャ―で粗砕したのちに、手動での分級を行い、-1φ(2000 μm)の出発試料を作成した。出発試料の粉砕にはディスクミルを用いた。ディスクミル粉砕では2枚の金属盤同士の幅(スリット幅)の調節によって粉砕強度が可変である。粉砕物の0.5φ刻みでの分級には電磁式ふるい(FRITSCH A-3PRO)を用いた。電磁式ふるいでは3000回/分の上下振動を振幅0.1~3.0 mmの範囲で負荷可能で、タイムランによる質量変化で分級終了の判断の客観性を保つこともできる。

 ディスクミル粉砕の際の粉砕強度の違いは下記の通りであった。スリット幅の広い粉砕と狭い粉砕では、中央粒径(φ50)は-1.0φ(2000 μm)と1.5φ(354 μm)で、 4φ(63 μm)未満の粒径の粒子生成量は9%と34%であった。

 粉砕分級後の各粒形試料について、XRF分析によって得た全岩組成とEPMA分析によって得た各結晶・ガラスの平均組成を基にして、マスバランス計算により各粒径階級ごとの結晶・ガラスの質量分率を計算した。その結果、結晶とガラスの量比が粉砕分級過程で変化する以下の特徴が明らかになった。原料の結晶量(斑晶量)約10%と比較して、1φ(500 μm)~3φ(125 μm)粉砕物は結晶量が増大する(最大約30%)。4φ(63 mm)未満の結晶量は減少する(最小約5%)。弱い粉砕条件の方が、より大きな粒径に結晶がより集まりやすい傾向がある。粉砕物の中の-1φ(2000 μm)試料は、出発試料(-1φ, 2000 μm)よりも結晶が乏しい。Os軽石の研磨断面についてEPMAの元素像・電子像から得たOs原料中の結晶(斑晶)のサイズ分布は、結晶が集まる粉砕物の粒径と調和的であった。以上のことから、ディスクミル粉砕により軽石質基質から斑晶の遊離が起こりやすい一方、斑晶は比較的粉砕されにくく、発泡したガラス質石基が4φ(63 μm)未満のサイズへ選択的に粉砕されたと解釈できる。このことは、粉砕物を火山灰影響実験に使う際の人工火山灰の特性の留意点として重要である。