日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 18:30

[SVC28-P07] 伊豆大島南東部,波浮北部から龍王崎周辺における新期大島層群N3期堆積物の活動史

*内山 涼多1、坂本 泉1 (1.東海大学海洋学部)

伊豆大島は,伊豆小笠原弧最北端に位置する活火山である.伊豆大島では, 低アルカリソレアイト系列の玄武岩を主とする噴火によって流れ出た溶岩や火山性堆積物の露頭が各地で観ることができる.本研究では,伊豆大島南東部に位置する波浮港周辺~龍王崎にかけての露頭における記載および岩相記載を行い,波浮港及び龍王崎周辺を形成する活動様式を考察した.

本研究により龍王崎から波浮地域にかけて分布する海食崖に露出している火山噴出物は,下位より上位に向かい龍王崎溶岩,龍王崎層,スリバチ層,M層,波浮溶岩,波浮角礫岩層に区分することが出来た.

龍王崎溶岩は,龍王崎周辺及び波浮北部で観られており,本研究で観られた露頭の最下部に位置している.龍王崎周辺の海岸では,褐色または灰色を呈したクリンカー発達している.構成鉱物に単斜輝石及び橄欖石を含む単斜輝石橄欖石玄武岩である.

龍王崎層は,龍王崎溶岩の上部に位置する層であり,黒色スコリア岩片を多く含み,細粒の火山灰をマトリックスとした火山噴出物から構成される.また,層内にクロスラミナが観られたことから水蒸気爆発および火砕サージを伴う活動があったと考えられる.龍王崎側から波浮港に向け薄層化するため火口は海側(南東沖)であったと推定される.

スリバチ層は,波浮港北方に位置するスリバチ火口から噴出された火山噴出物(N3期)で構成されている. スリバチ層で観られる岩相の特徴は,赤色酸化スコリアを多く含み,火口付近でアグルチネート化している.多孔質で構成鉱物は,斜長石>単斜輝石>斜方輝石である. 岩片中に下位の龍王崎溶岩片を含んでいる.分布は波浮港北部では,龍王崎溶岩の上部に確認され,龍王崎側に向けて薄層化する.

M層は,下位層を削り込む構造が確認されクロスラミナが発達する事から火砕サージを伴う水蒸気爆発によって形成された.M層で観られる岩相の特徴としてスリバチ層同様に赤色酸化岩片を含むが,スリバチ層と比べ赤色酸化岩片の含有率は低く黒色の角礫岩片が多く観られた.スリバチ層とは同時異相の関係にあると考えられる.

波浮溶岩は,波浮北部の海食崖で観られ,暗灰色をしている.スリバチ層の上部に位置していることからスリバチ層を形成する活動より後の活動であると考えられる.構成鉱物は,斜長石>単斜輝石>斜方輝石であり橄欖石は観られない.

波浮角礫岩層は,波浮港と龍王崎の双方で最上位に位置する層であり20 cmから50 cm程の角礫を多く含む.また,上部に向かうに従い100 cmを超える巨角礫岩が観られるようになった. この層で観られる岩石種は,多様であり,波浮港を作るマールの活動により形成されたと考えられる.